■戦線拡大

 ウクライナ侵攻は、第2次世界大戦(World War II)以降で最大の侵略行為になったが、当初ロシア軍部隊は16万人で、ウクライナ軍をわずかに上回った程度だった。軍事専門家は、攻撃側は防御側の3倍の兵力を確保する必要があるという「攻者3倍の法則」に言及している。

 さらに、ロシアはウクライナで航空優勢(制空権)の確保に失敗した。また、ロシアの兵力は、キーウや東部、南部の3正面に裂かれた。

 一方のウクライナ軍側は兵力の分散を余儀なくされたものの、北大西洋条約機構(NATO)による軍事訓練や親ウクライナの西側諸国から対戦車、対空兵器の供与を受け、ロシア軍側に大きな打撃を与えることが可能となった。

 プーチン大統領は開戦1か月で、ドンバス地方の掌握に注力することを決めた。戦力を集中させることでウクライナ側を圧倒し、露呈したロシア軍の重大な欠点に対応する思惑だ。

 米国防総省のジョン・カービー(John Kirby)報道官は先週、ウクライナ東部について、「ロシアに近接しており、補給路や軍事力にも近い」と述べ、開戦当初の段階で戦線が伸び切ってしまい、補給が追いつかなくなったことを教訓として生かしているとの考えを示した。

 さらにカービー氏は、ロシア軍の戦術に関して、「小規模の部隊をより狭い範囲に投入して大きな移動を避けることで、航空支援を地上作戦に組み込むのが容易になっている」と指摘した。