【5月31日 東方新報】中国の「国酒」とされる貴州茅台酒(Kweichow Moutai)がアイスクリームに姿を変えた。貴州茅台酒集団(Kweichow Moutai Group)が5月29日、貴州省(Guizhou)貴陽市(Guiyang)で販売を開始した。世界最大の飲料メーカーと称される同社だが、中国の若者の間ではアルコール度数の高い白酒(蒸留酒)離れが進んでおり、アイスを通じて若者層に「溶け込む」戦略だ。

 茅台アイスはプレーンとバニラがあり、アルコール度数は3%で価格は39元(約747円)。茅台酒のアルコール度数が38~53%で1本1500~1万6000元(約2万8768~30万6862円)程度するのに比べ、度数も価格も低い。アルコールは含んでいるので、未成年や妊婦らには販売しない。貴州茅台酒がアイス発売を発表した際、中国のSNS「微博(ウェイボー、Weibo)」では関連投稿が約2億回も閲覧された。

 茅台酒は国家行事や海外の賓客を招いたパーティーで必ず供される白酒で、1972年に田中角栄首相が訪中した際、宴席で周恩来首相と乾杯した酒として日本でも知られている。貴州茅台酒の時価総額は2020年に1兆8100億元(約34兆5220億円)に達し、トヨタ自動車(Toyota Motor)やコカ・コーラ(Coca-Cola)を抜いたと話題となった。

 一方、中国国家統計局によると、白酒の生産量は2016年の1358万キロをピークに減少に転じ、わずか5年後の2021年には715万キロとほぼ半減した。その分、リキュール、カクテル、果実酒、ソーダ酒などの低アルコール飲料が急増した。男同士でのどが焼けるような白酒を飲んで泥酔するスタイルはスマートではなくなり、女性も含めて「微醺(ほろ酔い)」を楽しむのが若者たちの新しい文化となっている。

 こうした流れを受け、貴州茅台酒は2017年に低アルコールカクテル「悠蜜(Umeet)」を発売している。さらに若者層に食い込もうと、中国の乳業大手・蒙牛乳業(China Mengniu Dairy)と組んで茅台アイスを発売した。

 若者からは「茅台酒を試す第一歩になる」と歓迎する声がある一方、茅台酒のオールドファンからは「天下の貴州茅台酒が若者にすり寄った」「せめて399元(約7652円)で販売すべきだ」という嘆き節も。高価な茅台酒のボトルは投機の対象になっていることから、「39元の茅台アイスも冷凍庫に寝かせておけば値上がりするかな?」というジョークも見られ、「国酒」ならではの話題を集めている。(c)東方新報/AFPBB News