【6月4日 AFP】米テキサス州ユートピア(Utopia)で唯一の学校には入り口に、教職員が銃を所持していることを警告する張り紙がある。先月24日、ここから約50キロ離れたユバルディ(Uvalde)の小学校で10代の容疑者が銃を乱射し、児童19人と教員2人を殺害する事件が起きた。教職員の武装は、こうした事件を防止するための措置だ。

 ユートピアは人口200人ほどの小さな町だ。丘や野原に囲まれ、メインストリートにある数軒の店以外、これといったものはない。

 ユバルディの事件は、米国の学校での大量殺傷事件としては過去10年間で最多の犠牲者を出した。

 2020年からユートピア学区長を務めているマイケル・デリー(Michael Derry)氏(56)は、「あのような事件を100%阻止する方法はありません」と話す。ユートピアにある唯一の学校には、幼児から高校生までが通っている。

「でも、この町には武装している人がいて、子どもを守るために必要なことは何でもすると分かれば、非常に大きな抑止力になると思います」と続けた。

 テキサス州は、2013年から教職員に対して学校での銃の所持を認めており、数十校がこの方針を採用している。

 ユートピアでは、教職員が学校での銃の所持を希望する場合、銃の所持許可証と申請書を提出し、教育委員会による身元調査を受ける必要があるとデリー氏は説明した。

 学校での教職員による銃の所持は、地域の警察官不足を補う手段にもなっている。

「ユートピアは(ユバルディ郡の)北東部の隅にあり、孤立しています。保安官事務所は郡の南側で、(メキシコ)国境を越えてくる移民の対応に追われています」

「そのため、通報してから警察が駆け付けるまで、最低でも25分から30分はかかります。それでは遅過ぎます」と話した。

 ユートピアの学校で警備の責任者も務める理科教員のブライソン・ダルリンプル(Bryson Dalrymple)さん(50)は、生まれ育ったユバルディで起きた事件に思いを巡らせ、「胸が張り裂けそうだ」と涙ぐんだ。そして、教師の武装は「事態が悪化する前に問題を取り除く」ための一つの方法と述べた。