【6月5日 AFP】アマゾン(Amazon)熱帯雨林にあるブラジル最大の先住民保護区ヤノマミ(Yanomami)居留地が先月、指定から30年を迎えた。だが、金の違法採掘者による先住民の殺害やレイプ、さらには河川の水銀汚染なども起きており、記念日を祝えるような状況にはない。

 ベネズエラ国境沿いのジャングルの中にあるヤノマミ居留地は、ポルトガルの国土を超える広さを持ち、数十年に及ぶ闘争の結果、1992年5月25日に保護区に指定された。

 本来ならば今ごろは、熱帯雨林と先住民の保護運動の成果を祝っているはずだった。しかし、代わりに取り沙汰されているのは、ジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領が関与している悪夢だと活動家らは述べる。

 先住民の指導者らによると、これまでにヤノマミ居留地に侵入した金の違法採掘者は2万人を超えるという。「ガリンペイロ」と呼ばれる違法採掘者は、先住民を殺害したり、女性や少女に性的暴行を加えたりしている上、金の抽出に使用する水銀で河川を汚染している。

 さらに、ヤノマミやイェクアナ(Ye'kwana)、その他の孤立した集団を含む先住民約2万9000人の保護区に、マラリアや結核、新型コロナウイルス感染症などの疫病を拡散している。

■「地球は苦しんでいる」

 ヤノマミ居留地以前にも先住民保護区はあった。ただ、9万6000平方キロに及ぶその広さは同国最大で、国土全体の13.8%を占める先住民居留地、計725か所の保護区指定に道を開く助けとなった。

 ヤノマミ先住民の権利擁護団体「フトゥカラヤノマミ協会(Hutukara Yanomami AssociationHAY)」は4月、違法採掘者が酒や薬物、食料、アクセサリーなどで先住民を誘い出し、女性や少女に性的虐待を働いているとする報告書を発表した。

 他方で、武装した採掘者による先住民殺害の報告もある。

「われわれは苦しんでいます。ガリンペイロはヤノマミの女性や子どもをレイプしています。われわれを殺し、水を汚染しています」とヤノマミの医療従事者で活動家のマウリシオ・ヤノマミ(Mauricio Yanomami)さん(35)は語る。

 金相場の高騰にあおられ、ヤノマミ居留地での金の違法採掘は昨年、32.7平方キロの範囲に広がった。2018年の監視活動開始以来、前年比で最大の拡大率だった。