■飢えて死ぬだけ

 ウクライナ東部の消耗戦に注目が集まっているが、黒海封鎖の影響はもっと広範囲に及びかねない。食料価格の高騰や飢饉(ききん)の恐れを警告する専門家の声は、切迫度が増す一方だ。

 ウクライナは世界有数の穀倉地帯で、ロシアに侵攻される前は毎月約450万トンの農作物を海路で輸出。世界の輸出量に占める割合は小麦が12%、トウモロコシが15%、ヒマワリ油が50%だった。

 だが、紛争と黒海封鎖で、貿易はほぼ止まった。鉄道とトラックを用いた代替輸送では、大量の農産物の輸出に求められる物流面と資金面での高いハードルを乗り越えられない。

 国連(UN)のアントニオ・グテレス(Antonio Guterres)事務総長は18日、ロシアのウクライナ侵攻のために「数千万人が食料不足に陥りかねない」「栄養失調、集団飢餓、飢饉が発生し、何年も続く恐れがある」と警鐘を鳴らした。

 ウクライナ当局によると、現時点で2000万トン以上の食料が国内に滞留している。

 オデーサの港と倉庫に保管されている穀物は400トン以上。すべて昨シーズンの収穫だ。ヘンナディ・トゥルハノフ(Gennady Trukhanov)市長は「今シーズンの収穫物を貯蔵することはできないだろう」「(封鎖が続けば)人々は飢えて死ぬだけだ」と語る。