【5月19日 AFP】国連(UN)のアントニオ・グテレス(Antonio Guterres)事務総長は18日、米ニューヨークの本部で開かれた食料安全保障をめぐる会合で、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う混乱の結果、数千万人が食料不足に直面する恐れがあるとして、ロシアに対し、ウクライナの港に貯蔵されている穀物の「安全・確実な輸出」を認めるよう呼び掛けた。

 地球温暖化や新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)、ロシアのウクライナ侵攻を受けて穀物や肥料の不足が深刻化。グテレス氏は「栄養不良や大規模な飢饉(ききん)を伴う危機が何年も続く可能性がある」と警告した。

 軍事侵攻に加え、ロシアに対する国際的な経済制裁を受けて肥料や小麦などの産品の供給が混乱。特に開発途上国で食料や燃料の価格が高騰している。

 侵攻前、ウクライナは1か月当たり450万トンの農産物を港から輸出していた。世界全体の輸出高に占めるウクライナ産の割合は小麦が12%、トウモロコシは15%、ヒマワリ油は5割に上る。

 ただ、オデーサ(Odessa)など国内の複数の港がロシアの艦船によって封鎖されたため、輸出は非効率な陸路頼みとなっている。

 一方、肥料の主要輸出国であるロシアにも影響は及んでいる。外交筋によると、肥料は西側諸国による制裁の対象となっていないものの、金融システムを標的とする制裁で輸出に支障をきたしているほか、ロシア自身も輸出を制限している。

 グテレス氏は、ロシア産の食料と肥料についても「国際市場への完全かつ無制限のアクセスが保証される必要がある」と述べた。

 一方、世界銀行(World Bank)はこの日、食料安全保障上の危機に伴う「甚大な影響」を緩和するため、120億ドル(約1兆5500億円)を新規に拠出すると発表した。その結果、向こう1年半の間に食料危機対策に充当される資金は300億ドル(約3兆8600億円)となる。

 世銀は新規資金について、食料・肥料の増産支援、貿易の促進、弱い立場に置かれた世帯・生産者の支援に充てるとしている。(c)AFP