【5月16日 CNS】中国西部の四川省(Sichuan)成都市(Chengdu)に住む「90後(1990年代生まれ)」の李雲祥(Li Yunxiang)さん(仮名)は最近、世界最大のNFT(非代替トークン)市場「オープンシー(OpenSea)」でデジタルコレクションのイラスト画像を購入し、SNS「微信(ウィーチャット、WeChat)」の自分のアバターにした。

 NFTとはコピー防止措置やナンバリングにより「代替できないことが証明されたデジタルデータ」の意味。デジタルコレクションとは仮想空間上の音楽や絵画、動画、アート玩具、フィギュアなどのコンテンツを指す。

 李さんは最近まで、中国版ガチャガチャと言われる「盲盒(ブラインドボックス、Blind Box)」の「沼」にはまっていた。そんな中、友人たちが次々とデジタルコレクションにのめり込むのを見て、自分も興味を示すようになった。「潮玩(アート風おもちゃ)」が流行する中国で、その主流がブラインドボックスからデジタルコレクションへと移行しつつある。

 中国では現在、デジタルコレクションの配信プラットフォームは50を超えている。阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)、騰訊(テンセント、Tencent)、百度(Baidu)などのIT企業がプラットフォームを作り、無数のデジタルコレクションが販売されている。

 宇宙開発事業を担う中国国家航天局は、4月24日の「中国宇宙の日」を記念したデジタルコレクション「九天漫書」をリリースし、発売と同時に完売した。成都市の金沙遺跡博物館(Jinsha Site Museum)は、遺跡から出土した黄金仮面などのデジタルコレクションを作り、販売開始から50秒で完売した。

 一方で、デジタルコレクションにはリスクがつきまとう。最近は中国の有名歌手が、数百万元(約1898万円)の価値があるデジタルコレクションを盗まれたことが話題となった。専門家によると、NFTはプライバシー特性が高いため、コレクションを取り戻せる可能性は低いという。取引プラットフォームのOpenseaは中国で正式に承認されていないので、ユーザーの売買行為は中国の法律で保護されていない。

 こうした問題から、デジタルコレクションに関連する法整備の議論が始まっている。中国社会科学院金融研究所フィンテック研究室の尹振涛(Yin Zhentao)主任は「デジタルコレクションの投機化を抑制し、本来のコレクションの性質に戻す必要がある」と指摘している。最近はデジタルコレクションを取り扱う一部のプラットフォームが閉鎖された。

 政策提言機関・中国人民政治協商会議全国委員会の徐念沙(Xu Niansha)委員は「デジタルコレクションの健全な発展のために著作権保護を強化して取引を監督し、プラットフォームの参入システムを作るべきだ」と提案している。(c)CNS/JCM/AFPBB News