【5月16日 AFP】スイスで15日、臓器提供をめぐる国民投票が行われ、生前に提供を明確に拒否していない限り、死後の提供に同意したとみなす「推定同意」制度の導入が賛成60%で承認された。

 現行法では、臓器提供には生前の同意が必要だが、本人の意思が不明なことも多い。その場合、親族の判断に委ねられるが、提供に反対する事例が大半を占めている。

 昨年末時点で、スイスでは臓器移植を待っている患者は1400人超に上った。昨年は166人から臓器提供があり、計484の臓器が移植された。

 だが、臓器移植団体「スイストランスプラント(Swisstransplant)」によると、提供を待つ間に72人が死亡した。

 新制度では、臓器提供を望まない人は、生前に明示しておく必要がある。希望の有無が分からない場合は同意とみなされる。ただし、親族が拒否することも可能。新制度は16歳以上が対象となる。

 また、死者が臓器提供を希望していなかったことを親族が知っている場合や、そう推定できる場合にも提供を拒否できる。親族と連絡が取れない場合、臓器の摘出は行われない。

 一部の助産師や医師は、生前に意思を明確にしなかった人が臓器提供に同意したと推定するのは倫理的に問題だと指摘していた。反対派からは、遺族は批判を恐れ提供を拒否できなくなりかねないとの声も上がっていた。

 推定同意方式は他の複数の欧州諸国ですでに採用されている。(c)AFP