【5月15日 東方新報】京都市京セラ美術館(Kyoto City KYOCERA Museum of Art)で3月下旬から「兵馬俑(へいばよう)と古代中国~秦漢文明の遺産~」展が開かれており、日本国内で話題を呼んでいる。今回の兵馬俑展ならではの魅力について、専門家の唐啓山(Tang Qishan)日中文化協会専務理事と鶴間和幸(Kazuyuki Tsuruma)学習院大学名誉教授に聞いた。

 今回展示されている文化財約200点のうち約9割は「初来日」となる。会場は「統一前夜の秦」「統一王朝の誕生」「漢王朝の繁栄」の3エリアに分かれている。陶俑(陶製の造形物)の人形を比較すると大きな特徴があり、統一前の戦国時代の人形は高さ約20センチと非常に小さく、統一後の秦王朝になると等身大196センチの大きさがあり、その後の前漢では50センチほどになる。後漢の陽陵(Yangling)で発掘された豚、馬、牛、羊、犬などの家畜の陶俑も、第3エリアの見どころの1つだ。

 唐氏は「陶俑の大きさと種類の変化は、秦と漢にける国家権力のあり方が関係している」と説明。軍事国家である秦は国家の威厳を示すために大きな将軍俑を作った。一方の漢王朝、特に政治の長期安定と経済発展を果たした後漢では、庶民の日常をテーマにした副葬品が登場し始めたという。「展覧会を通じて、戦争の時代から平和の時代に移行することによる変化を感じることができる」と意義を語る。

 また、鶴間教授は「これまでの海外の中国学研究では、秦文明と漢文明は一体に見なされることが多かったが、最近は両者の違いが注目されている。秦王朝の兵馬俑は、古代ローマの芸術様式に影響されている可能性がある」と指摘。鮮やかな衣服、荒々しい馬、細部の描写など、古代中国の芸術作品では一般的ではない立体的な感覚とリアリズムがあるという。「一方、儒教思想を主とした漢王朝では精緻な人形を作って埋葬することは道徳的ではないとみなされ、人型の陶俑は秦王朝よりも小さく、表現や衣服に具体的な描写が少なくなった」と解説する。

 会場で注目される展示品には、「鎏金」というメッキ法と青銅で作った「汗血馬」がある。この彫像は陽信(Yangxin)公主の墓から発掘されたもので、大宛国(現ウズベキスタン)の馬をイメージして作られ、中国で一般的だった小さくて実用的なモンゴル馬とは形状が異なっている。素材の豪華さと精巧な職人技から判断すると、前漢の武帝の贈り物である可能性が高く、馬を重視した前漢初期の文化的傾向とシルクロードを通じた文明の交流を象徴している。

 鶴間教授は人気漫画「キングダム(Kingdom)」の実写映画の監修を務めている。「今回の展覧会では、漫画に登場する青銅製の武器などの原型が多数見られる。若者が中国の歴史を学ぶ良い機会になる」と語っている。(c)東方新報/AFPBB News