【4月22日 東方新報】中国でここ数年、「トークショー」の人気が高まっている。複数人によるトーク番組ではなく、1人でトークをして笑いを取る米国のスタンダップ・コメディーのイメージだ。

 トークショーは中国では「脱口秀(Tuokouxiu)」と呼ばれる。「Talk Show」の発音に近い漢字を当てはめたものだが、中国には古くから「脱口而出(考えないで即座に話す)」という言葉があり、中国語のニュアンスともかみあっている。「秀」は以前から「Show」の意味で使われている。

 トークショーは本来トーク番組の意味だったが、2012年に衛星テレビ「東方衛視(Dragon Television)」の番組「今晩80後脱口秀」から、現在のスタンダップ・コメディーのスタイルが広まった。当時の若者である「80後(1980年代生まれ)」が関心を持つカルチャーやファッション、時事ネタを中心に、トークタレントが文化的センスのあるユーモアと軽妙な語りを披露して、大人気となった。

 2016年にはインターネットのトークショー番組「吐槽大会」が登場。「吐槽(Tucao)」は「ツッコミ」や「愚痴る」を意味する新語だ。2017年には多くのスタンダップ・コメディアンが同じテーマでトークを競うネット番組「脱口秀大会」が始まり、大きな話題を呼んだ。一連の番組から、脚本家・作家でもある李誕(Li Dan)さんや、「男性はどう見ても普通の人でも、なぜそんなに自信が持てるの?」というセリフで人気となった女性の楊笠(Yang Li)さんら多くのスターを生んだ。

 こうした人気の高まりから、中国各地の街角には、ライブハウスや小さな劇場でトークショーが行われるようになった。地元で独立するトークタレントや副業でトークショーをする人も増えた。

 トークショーはひたすらギャグを言うのではなく、現代人が日ごろ感じるストレスや悩みをネタにしながら、ジョークや皮肉を交えて語るのが特徴。聞く者にとっては自分の代わりに「吐槽(愚痴る)」していると共感し、変化の激しい社会で抱える心身の疲れを解消している。

 最近はネット上で発信する一般人のインフルエンサーも増えている。その1人が河北省(Hebei)邯鄲市(Handan)に住む、今年で30歳の劉阿楠(Liu Anan)さん。彼は古紙や鉄くず、プラスチック、冷蔵庫、テレビなどの廃棄物リサイクル業を営んでおり、作業をしながらネット上でトークする。「夜明けから仕事をして、日没まで働くのが僕の仕事」。重労働かつ危険にもかかわらず、乱高下するリサイクル市場によって収入が安定しない暮らしをありのまま語る姿は共感を呼び、1000万人のフォロワーがついた。「自分の働く姿で、多くの人にポジティブなエネルギーを与えられたら幸せです」と劉さん。トークショーの広がりは、現代の中国社会を反映する鏡となっている。(c)東方新報/AFPBB News