【4月25日 AFP】ウクライナ首都キーウ北西にある集落モシチュン(Moshchun)の自宅に戻る住民は命懸けだ。撤退したロシア軍があちこちに不発弾や地雷、ブービートラップを残して行ったためだ。

 爆撃され、焼け落ち、略奪被害に遭った家に入るには、いったんは逃れた死や負傷の危険を冒すことになる。

「地雷の幾つかは除去されたと聞いていたけど、うちの庭でブービートラップを見つけた」と、オレナ・クリメンコ(Olena Klymenko)さんは語った。「それでも、家から取ってこなければならない私物がある」

 侵攻直後に国外に避難した数百万人の一部が、ロシア軍との激戦地となっていたキーウ北部に戻ってきている。無差別に破壊され壊滅した故郷を目の当たりにする人も多い。

 松林に囲まれた人口1000人弱のモシチュンもその一つだ。ほぼすべての家屋が爆撃で被害を受け、窓ガラスは粉々に割れている。完全に焼失した家もある。

「連中は何もかもを破壊した。私たちが何年もかけて築いた全てを」と話したのは、パン職人のワディム・ジェルデツキー(Vadym Zherdetskyi)さん(51)。経営する店の建物は破壊されずに済んだが、ロシア軍はドアをこじあけて酒を残らず持ち去った。食料品はウクライナ軍や住民に分けてしまったため、ロシア軍が来た時にはもう店内にほとんど残っていなかった。

 めちゃくちゃにされた店を片付ける前に、ジェルデツキーさんはトラップや不発弾がないかを確認しなければならなかった。当局の地雷除去チームが安全確保を行っているが、集落に数十軒ある建物全ての確認を終えてはいないためだ。

「フックを付けた縄を使った。投げて、床に沿って引っ張る。何も爆発しなければ、5メートル前に進める。ドアも同じように、フックを引っ掛けて開けた」。爆発物は見つからなかった。

 作業の危険性についてジェルデツキーさんは、侵攻を受けた際の砲撃や銃撃、戦車の恐怖に比べれば大したことではないと肩をすくめる。「仕方がない」

 クリメンコさんは庭で不発弾1発と、隣家との間に張られた長い針金を見つけた。トラップに見えたので、家族を通じて兵士に知らせたという。

 集落を警備するウクライナ軍は、ロシア軍が撤退時に仕掛けたとみられるトラップの危険が特に高いと指摘する。トラップは、住民が拾いたくなるような物を狙って仕掛けられているという。

「地面に置いた宝飾品の下に穴を掘り、爆発物を置く。おもちゃや、ロシア兵の遺体にも仕掛けられていた」と、兵士の一人は証言した。この証言や、トラップや不発弾の犠牲になった住民がいたかについて、AFPは確認できていない。(c)AFP/Joshua MELVIN