■民間投資への期待

 現在、途上国でのインフラ整備は、民間投資に大きく依存している。財務省によると、2019年の日本から途上国向けの民間投資は約419億4500万ドル(約5兆4000億円)と、政府開発援助(ODA)額の3倍以上だ。世界的にも民間のインフラ投資は、変動はあるものの拡大を続けている。

 だが、民間投資が進んでいるのは、エネルギーや運輸・交通の分野にとどまる。水資源管理に詳しい国際協力機構(JICA)地球環境部次長の松本重行(Shigeyuki Matsumoto)氏は、「水に関してはまだ少ない」と語った。

 国連(UN)は、持続可能な開発目標(SDGs)の目標6で、2030年までにすべての人に安全で手頃な飲み水へのアクセスを提供することを掲げる。だが、2021年の国連報告書によると、129か国については、それまでに持続可能な形で管理された水資源を確保できるめどが立っていない。

 松本氏は「アフリカが一番難しい状況に置かれている」と指摘する。サハラ以南の地域では、人口の35%、地方部では実に2人に1人が、基本的な給水サービスを受けられない状況にある。

 途上国ではアフリカを中心に乳児死亡率が高く、水の供給と衛生状態は密接に関わっている。子どもが水くみ作業のため学校に行けないなど、水へのアクセスは「貧困のバロメーター」ともなっている。

「援助とか公的資金だけではとても足りない」と松本氏は言い、民間の役割に期待を示した。

 水の供給に関しては、初期投資だけでなく、長期的に運用できる環境を整えることも大切だと指摘。「ランニングコストがなるべく抑えられて、地元の人たちで運転ができるような施設が重要になってくる」と話した。

■水が変われば暮らしが変わる

 リーマン・ショック後、クリーンウォーターシステム事業の存続が危ぶまれたこともあった。今では「世界の人々に新たな感動と豊かな生活を提供する」というヤマハ発動機が掲げる企業目的の一端を担っていると、金丸氏は言う。

 ヤマハ発動機は、サハラ以南のアフリカに加えて、南アジアや南太平洋など、安全な飲み水が供給できていない地域でも事業の拡大を目指す。

「水があると人が集まり、大きなコミュニティーに発展していくということを目の当たりにした。水が変われば暮らしが変わる」と、金丸氏は自信を示した。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により装置の設置延期が相次いだ。計画の遅れを取り戻すため、金丸氏はこの夏、感染拡大後初めての海外出張先として、コンゴ共和国とコンゴ民主共和国に向かう。(c)AFPBB News/Marie SAKONJU/Shingo ITO