犠牲者の検視作業続く ウクライナ・ブチャの遺体安置所
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■多数の遺体袋
ブチャ市民の遺体の収容作業は4月3日に、検視はその5日後、ブチャ近くのビラツェルクワ(Bila Tserkva)の遺体安置所でそれぞれ始まった。安置所ではフランス警察の検視官ら18人も加わり、戦争犯罪の立証に向けウクライナ当局や国際機関による捜査を支援している。
駐車場には、手押し車やトレーラー、保冷装置のないトラックで遺体袋が運ばれてくる。降ろされた袋は、その場に数時間放置されることもある。
息子を失った夫婦が、安置所を訪れていた。妻は忍耐の限界に達していた。トラックが駐車場に到着するや否や、自ら後方の扉を開けた。強烈な悪臭にもかかわらず、殺気だった様相で多数の遺体袋の中から「163番」を捜し出そうとしていた。
「あの子だ、私たちの息子! 見せて! あの子なのかどうか見せて!」と妻は懇願し、袋を開けようとした。夫はそれを制止し、自らジッパーを開けた。
「私の息子、私の小さな赤ちゃん。あの子のイヤリング、あの子のジャケット」。妻はマスク越しに声を絞り出した。
妻の話によると、息子は3月初め、自身の妻と娘を西部リビウ(Lviv)に退避させた後、今度は両親を助け出すため、ブチャ近くのミロツケ(Myrotske)に戻ろうとした。だが、息子が両親の元に着くことはなかった。1か月にわたって、誰も手掛かりを得ることができなかった。
4月6日、両親宅から200メートル離れた沼地付近で息子の腐乱した遺体が発見された。AFPが確認した死亡診断書には、銃創により亡くなったと書かれていた。
■終わりなき死のサイクル
埋葬は森の外れにあるブチャの第2墓地で行われる。ロシア軍により特別な理由もなく殺害された住民3人の遺体が、埋葬を待っていた。
そこへ新たに四つのひつぎが到着した。急いで穴を掘り、夜のとばりが下りる前に埋葬しなければならない。ブチャで続く、終わりなき死のサイクル。それは明くる日も容赦なく繰り返される。(c)AFP/Daphne ROUSSEAU