【4月20日 東方新報】「宿題」と「塾通い」の2つを減らす「双減」政策が昨夏から始まった中国で、子ども向けのスポーツ教室が花盛りとなっている。

 日本以上に受験戦争が激しく、学歴が人生に大きく影響する中国。夏休みや春節(旧正月、Lunar New Year)などの長期休暇に入ると、親が幼い子どもを学習塾に連れて行く光景が当たり前だったが、最近はそれがスポーツ教室に変わっている。水泳、バスケット、ラグビー、ボクシング、トランポリン、テコンドー、ブラジリアン柔術、ロッククライミング…。各都市ではさまざまな子ども向けのスポーツ教室が誕生している。

 中国の子どもは小学校に入る前から勉強漬けの日々が続き、心身の成長に悪影響があると以前から指摘されていた。「中国青年発展報告」によると、17歳未満の子どものうち3000万人が何らかの精神症状や行動障害があるという。運動不足による肥満児や近視の児童の増加も問題となっている。

 双減政策では、学校での宿題の上限を学年ごとに設定。学習塾に至っては「営利目的の経営を認めない」とし、実質は「塾禁止令」だ。政府が同時に芸術鑑賞やスポーツを奨励すると、双減政策の発表から1か月で全国に3万か所以上の芸術・スポーツ教室が新設された。塾代の負担がなくなり、時間の余裕もできたことで、各家庭は子どもをこうした教室に通わせている。

 ただ、新たな問題も起きている。政府は高校入試でスポーツの配点を徐々に引き上げる方針で、スポーツも「受験戦争の一部」とみて子どもに教師通いを勧めている保護者も少なくない。高額な費用を注ぎ込み、子どもに高度な運動をさせてけがをするニュースが聞かれるようになった。

「中国版ゆとり教育」とも言われる双減政策を政府が導入した背景には、少子化対策がある。中国は今年中にも人口減少が始まるとみられている。2015年に一人っ子政策を廃止し、昨年には3人までの出産を認めたが、「教育費を考えると何人も子どもを育てられない」と考える夫婦が多いため新生児の減少に歯止めがかからない。そこで双減政策により1人当たりの教育費を減らし、出生増につなげる狙いがある。専門家は「塾通いがスポーツ教室通いに変わるだけでは、政策導入の意味がなくなる」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News