【4月21日 東方新報】中国で最近、「適老化」(高齢者に適した変化)という言葉が広がっている。急激な高齢化が進む中、高齢者に配慮した社会作りが必要となっているためだ。

「00後(2000年代生まれ)」の若者、浙江大学(Zhejiang University)の潘さんはSNSに「適老化改造促進会」というグループを立ち上げた。「年老いた親の自宅をどう改築すればいいですか」「高齢者に便利なスマホアプリは?」「トイレには手すりがオススメ」など、高齢者の日常生活をどうサポートするか、活発な意見が交わされている。

 潘さんは春節(旧正月、Lunar New Year)の連休に帰省した時、両親から「PCR検査の結果の報告書をどう書けばいいか」「スマートテレビの使い方が分からない」と相談を受けた。年老いてきた両親を見て、「私がいない時、これからも生活に困るに違いない。他にも同じ悩みを持つ同年代も多いはず」と考え、グループを立ち上げた。「離れて暮らす親の居場所を常に確認する方法はないかな?あまりお金はかけられないんだけど」「子ども向けのスマートウオッチを購入するといいよ」。お互いの知識や経験を共有し、役立てようとしている。

 2020年の国勢調査によると、中国における65歳以上人口は1億9064万人で、高齢化率は13.5%に達した。2030年には3億人(22.3%)を超え、超高齢化社会に突入する見込みだ。

 厚生労働省に相当する国家衛生健康委員会は昨年4月、今後の高齢者のケアは「9073モデル」を中心に進めると表明した。老後を自宅で暮らす人が90%、地域のコミュニティ(社区)を基盤に過ごす人が7%、施設に入所する人が3%という意味だ。老後を介護施設で過ごす割合が増えている日本と対照的だが、「年老いた親の面倒は子どもが見る」という中国の伝統的家族観が下地にある。ただ、それは子どもが複数いる上、親と子どもが同居している家庭なら可能と言える。

 これからは「一人っ子政策」の時代に生まれた子どもが親の世話をする時代となり、1組の夫婦が祖父母4人の面倒を見ることになる。経済成長と社会の発展に伴い、田舎で暮らす親と都会で働く子どもというように別々に暮らす家庭も多い。老夫婦もしくは高齢者1人で暮らす「空巣家庭(子どもがいない巣、という意味)」という言葉も定着した。

 こうした中、政府はITを活用した「智慧養老(インテリジェント老後)」を推進している。中国では欠かせなくなったSNSの微信(ウィーチャット、WeChat)や微博(ウェイボー、Weibo)、ECサイトの淘宝(タオバオ、Taobao)、生活サービスの美団(Meituan)、検索サイトの百度(Baidu)などを名指しして、高齢者が使いやすいネットサービス提供を指示。サイトの文字を大きくする、不要な広告を掲示しない、高齢者専用サービスを設けることなどを求めている。食事の宅配サービスを受け、タクシーを呼べば部屋まで迎えに来るなど、在宅で老後を過ごせる社会作りを進めている。

 政府が2021~2025年の国家発展計画として定めた「第14次五か年計画」には、「家庭養老ベッドプロジェクト」も組み込まれた。ベッドに体温や心拍数を計測する装置を取り付け、異常があれば家族や地域の管理センターに連絡が行くシステムを導入する。室内全体にも人の動きを感知するセンサーを導入し、浴室でずっと動かない、リビングで突然倒れたという動きをすぐに把握しようとしている。

 こうした事業は各地の不動産会社が担っているが、投入する費用に対し収益が得られるまで年数を要する課題がある。中国の経済成長が著しい中、ビジネスとしての「うま味」が少なく、他の事業に投資をした方が多額の利益を得られやすいと考える企業もある。急激な少子高齢化社会が進む中、高齢者に優しいビジネスモデルを確立することが求められている。(c)東方新報/AFPBB News