■「関心を呼び戻す」

 同機関のアブドラ・アブドルアジズ・アルハジ(Abdullah Abdulaziz Alhaji)代表は、ウクライナの医療従事者は主に化学兵器による攻撃を受けた際の対応を知りたがっており、「彼らは私たちの経験を生かそうとしている」と説明した。

 ウクライナでは今のところ、化学兵器が使われたとの確認は取れていない。化学兵器禁止機関(OPCW)によると、シリアでは塩素・硫黄ガスが使用された。

 ホワイト・ヘルメットは、負傷者の手当ての方法などを開設するチュートリアル動画を製作している。

 また、ルーマニアのウクライナ国境では、難民支援団体「レフュジー・フォー・レフュジーズ(Refugee 4 Refugees)」の創設者でシリア人のオマル・アルシャカル(Omar Alshakal)氏がウクライナから避難してきた人を支援している。

 英ロンドンを拠点とする「国際戦略研究所(International Institute for Strategic Studies)」のアナリスト、エミール・ハケーム(Emile Hokayem)氏はAFPに対し、「シリア人がウクライナの大義を熱心に支持しているのは、シリアの悲劇に対する国際社会の関心を呼び戻すのに役立つからだ」と指摘。「警告したのに無視した」欧米諸国を批判するためだとも語った。

 米シンクタンク「中東研究所(Middle East Institute)」のチャールズ・リスター(Charles Lister)上級研究員は、反ロシアの波に乗ると同時に、ウクライナと新たに有意義な地政学的関係を築きたいとの思惑がシリア人活動家にはあると指摘する。

 シリアの反体制派とウクライナ政府にとってはロシア政府の責任が問われるかどうか、が一番の関心ごとだ。さらにシリア側では、ロシアが支援するバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領の責任もその対象に加わる。

 ホワイト・ヘルメットのサレハ氏は「プーチンがウクライナでの犯罪の責任を問われるなら、シリアでの犯罪についても責任を問われることになる。だが、プーチンが責任を免れれば、再び罪を犯すのは単なる時間の問題でしかない」と述べた。

 国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)」のアニェス・カラマール(Agnes Callamard)事務総長は先月、ウクライナでは「われわれがシリアで目撃したことが繰り返されている」と指摘した。

 シリアとウクライナにおけるロシア軍の戦術の類似点はこれまでも指摘されている。インフラを標的にすることや街から人を追い出すための「人道回廊」の設置・停戦提案などの手法だ。

 かつてはウクライナの首都キーウの著名弁護士だったオレフさんは、今は兵士となっている。「ロシアは、住宅・社会・経済インフラへの爆撃の効果を確かめるための実験場としてシリアを利用した」と非難。インフラが破壊されるとその国には「住めなくなってしまう」と語った。(c)AFP/Lynne Al-Nahhas