【3月29日 AFP】ウクライナの首都キエフ西郊、ストヤンカ(Stoyanka)の集落入り口の交差点。今なおロシア軍の狙撃兵が潜んでおり、人けはない。アンドリー・オスタペツ(Andrii Ostapets)さん(69)はしかし、取り残された住民に、そしてまだ生きているなら、自身の飼い猫にも食べ物を届けようと試みている。

 私設の博物館を運営するオスタペツさんは1週間前、妻と共にストヤンカから避難した。自宅の庭に砲弾がさく裂し、妻が吹き飛ばされたためだ。その後、ウクライナ軍がロシア軍を撃退しつつあると聞き、戻ってきた。

「住民が殺され、家々が焼け落ちるのを見た。地獄だった」。ロシア軍に占領された時のことを振り返る。「きのう、連中は私たちの農場から追い払われた。ロシア兵に生き延びるチャンスはない。降伏しなければ死が待っている」

 キエフ包囲をもくろむロシア軍に対峙(たいじ)する最前線となって約1か月。ストヤンカは廃虚と化した。刺すような冷たい風が吹きすさぶ。集落を囲む、木に覆われた低い丘からは砲声が響く。銃声も聞こえる。

 ウクライナ領土防衛隊によれば、狙撃兵が潜んでいるのはその林の中だ。

 ロシアは25日、侵攻当初の作戦目標を縮小し、東部ドンバス(Donbas)地方に戦力を集中する方針を示唆した。しかし、ストヤンカなどキエフ都市圏の外縁部では、反転攻勢に出たウクライナ軍とロシア軍との戦闘が続いている。

「車いっぱいに食料品を積んできた。取り残された人やペットに届ける」とオスタペツさん。「許可を待っているところだ。生き残っている人たちを助けに行く」