【3月26日 AFP】中国の反体制派アーティスト、艾未未(アイ・ウェイウェイ、Ai Weiwei)氏(64)が22日、イタリアのローマ歌劇場(Teatro dell'Opera di Roma)でオペラの演出家としてデビューした。手掛けた作品は、イタリア・オペラの巨匠ジャコモ・プッチーニ(Giacomo Puccini)の「トゥーランドット(Turandot)」だ。

 この歌劇の主人公は、冷酷で復讐(ふくしゅう)心に燃えたトゥーランドット姫。求婚者に三つの謎掛けをし、答えられないと首をはねてしまう。

 圧制と流血の事態が繰り広げられるストーリーは、権力にあらがい、人権と表現の自由のために闘ってきた艾氏が演出するにはふさわしい。

 艾氏はビデオ映像による演出で、国家による脅威を表現。未来都市の廃虚を思わせるセットには、防護服を着た医療従事者、川を渡る難民、香港のデモ隊と対峙(たいじ)する機動隊、フェンスの向こう側にいる移民、さらには警棒、首を絞められる市民、催涙ガスなど、最近のニュースの悲惨な映像が映し出される。

 指揮者は、ウクライナ人のオクサーナ・リーニフ(Oksana Lyniv)氏(44)。昨年の独バイロイト音楽祭(Bayreuth Festival)で同音楽祭初の女性指揮者としてタクトを振って評価を高め、今年はイタリア初の女性音楽監督としてボローニャ市立劇場(Teatro Comunale di Bologna)に迎えられた。

 艾氏が演出する新解釈のトゥーランドットには、プッチーニの死後に同時代の作曲家が補筆したエンディング部分がなく、曖昧さを増して幕が下ろされる。

 リーニフ氏は、この「さまざまな解釈ができる」フィナーレにより、見る人は登場人物を観察しながら「この社会における自らの役割」を考えさせられると語った。(c)AFP