【4月11日 AFP】26年前、中国の反体制派アーティスト、艾未未(アイ・ウェイウェイ、Ai Weiwei)氏は、北京の天安門広場(Tiananmen Square)に向けて中指を立てた写真をひそかに撮影しながら、それが挑発的なことを自覚していた。

 だが、今になってこの写真が、香港で高まりつつある検閲への不安という問題の中心になるとは思ってもいなかった。

 英国の旧植民地である香港は、中国共産党の干渉や検閲から自由な、中国への文化的玄関として名高かった。だが、中央政府が民主化運動を抑え込もうとしたこの1年で、その評判は傷ついた。

 このような中、今年にオープン予定の美術館「M+ Museum」が香港アート界で注目を集めている。M+は、スイス人の美術品収集家ウリ・シグ(Uli Sigg)氏の大規模な寄贈を中心とする、世界で最も充実した中国現代美術コレクションになると期待されている。

 美術館のオンラインカタログによると、艾氏の作品だけでも249点を所蔵。フォトジャーナリストの劉香成(Liu Heung-shing)氏が撮影した、1989年の天安門事件の写真も含まれている。

 だが、香港の法的・政治的雰囲気が不安定になった中で、挑発的な作品を展示できるのか疑問符が付いている。

 中央政府寄りの香港政治家は既に、昨年施行された香港国家安全維持法(国安法)にM+が違反し「中国に対する憎悪を広めている」と非難している。特に標的となっているのが、艾氏による天安門での写真だ。

 政府関係者は3月末、開館時に艾氏の写真が展示されないことを確認したと発表。M+のコレクションが国安法に違反していないか、治安当局による調査を歓迎すると述べた。

 艾氏は今、オープニングで展示予定の二つの巨大インスタレーションを含め、自らの作品が果たして展示されるのか疑問に思っていると述べ、「香港のより自由で、民主的な社会が消えつつある」と嘆いた。