■リサイクル工場を開設

 昨年12月、長坂氏が代表取締役を務めるマゴクリエーション(MAGO CREATION)は、アグボグブロシーにリサイクル工場を開設した。スラム街の人々に雇用の場を提供するためだ。

 今後はガーナで、100エーカー(約12万坪) の土地の取得を目指す。リサイクル工場だけでなく、農地や住居も提供するためだ。スラム街を、3万人が健全に暮らせる街に変えたいと意気込む。

「100エーカーの土地は、僕にとっては100エーカーのキャンバス。その上に世界を平和にする持続可能な社会を作品として発表するのが僕の夢」と話す。

 国連によると、2019年に世界で発生した電子廃棄物は5360万トン。2030年には7400万トンに増加すると予測されている。

 日本では家電リサイクル法が2001年に本格施行され、海外でも78か国で同様の政策や法令が整備されている。しかし、E-waste関連法を整備している国の割合を「世界の半数」に引き上げるという国際電気通信連合(ITU)の目標には程遠い。

 廃棄物・リサイクル政策に詳しい中央大学(Chuo University)の佐々木創(So Sasaki)教授は、今後も発展途上国の家電ごみは増え続けると警告を鳴らす。その背景には、中国の海外ごみ輸入規制がある。

「中国に輸出されていたごみが入らなくなった。中国から振り替えられ、アフリカへごみが輸出されることもある」と佐々木教授は言う。特にアフリカは欧州からの家電ごみが目立つという。

 長坂氏のガーナ支援は環境やなりわいだけにとどまらない。作品の売り上げでスラム街の教育や文化の向上にも力を入れている。長坂氏は学校やギャラリーをつくり、教育と文化の拠点を設けた。

「廃材アート」で一気に注目を浴び、現在、長坂氏のギャラリーは国内に6か所、海外に2か所ある。年内には展覧会も予定されている。しかし、今後も作品が高額で売れ続ける保証はない。ガーナの支援事業が軌道に乗るには高いハードルもある。

「大失敗するかもしれない。絵を買ってくれた人に迷惑を掛けるかもしれない。絵もしっかり売って、しっかりそのお金で再投資する。やってみなければ分からない」と前向きだ。