【3月26日 AFP】イラク・モスル大学(Mosul University)の由緒ある図書館は、かつて100万点の蔵書を誇っていた。しかし、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が押し入り、本棚は引き倒され、古文書は焼き捨てられた。ISの敗北から5年近くがたった今、モスルは街が誇る図書館の再建を試みている。

 イラク北部に位置するモスルは、中東地域の交易の十字路として昔から商人や貴族が集まり、文化的・知的生活が豊かな都市だった。数多くの書店や希少な書物の保管所があり、年代物の希少な文献、特に宗教関連のものが多数あった。19世紀後半にイラク初の印刷機が稼働したのも、モスルだった。

 大学図書館の技術部長を務めるモハメド・ユネス(Mohamed Younes)氏は、モスル奪還後に目撃した惨状を振り返った。「ここに戻って来て目にしたのは…棚から本が引き出され、地面に放り投げられ、燃やされた跡でした」

 哲学、法律、科学、詩…数えきれないほどの書物が、ISの極端な世界観と相いれないという理由で焼き尽くされた。最も貴重とされる本の一部は、闇市に出されていた。

「以前は100万点以上の蔵書があり、イラクの他の大学では目にできないものもありました」とユネス氏。だが、ISが暴力でモスルを占拠してから、85%が失われた。

■書物への渇望

 再び棚に本を並べるための復興作業は、寄付を受けながらゆっくりと進んでいる。

 国連(UN)機関の資金で改修された図書館の建物は2月に再開した。ガラス張りの4階建てで、電子書籍を集めたデジタルアーカイブもある。蔵書数3万2000点からスタートし、最終的には100万タイトルのコレクション再建を目指す。

 モスル大学図書館の他にも、文化復興の兆しが見え始めている。

 歴史ある書店街ナジャフィ(Al-Nujaifi)通りには戦乱の傷跡が生々しく残るが、それでも一部の店が自費で再開にこぎつけた。

 昨年、創設100周年を迎えた市立中央図書館は、すでに修復を経て2019年後半に再開している。以前は12万点の蔵書を誇っていた同図書館では「文学、社会学、宗教関連の2350冊を失いました」とジャマル・アブドラボ(Jamal al-Abd Rabbo)館長は説明する。

 ただ、何よりも大事なのは、市民が今も書物を渇望していることだと言い、「来館者の中には、毎日1~2時間ここで本を読んでいく人もいます」と話した。 (c)AFP/Mohammed Salim