【11月3日 AFP】イラクで20年ぶりに、伝統舞踊や音楽、芸術の祭典「バビロン国際フェスティバル(Babylon International Festival)」が復活した。

 会場となった首都バグダッド南方のバビロンの古代遺跡を娘2人と訪れたシャイマさん(45)は、「とてもうれしい。こうしたイベントは何年も見ていない」と話した。

 バビロン国際フェスティバルが最後に開催されたのは2002年。翌年には米国主導の有志連合がイラクに侵攻し、長年独裁を敷いたサダム・フセイン(Saddam Hussein)政権は崩壊した。

 イラクはその後、米国との戦争や反政府組織、部族間、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」との戦闘が続いた。数万人が亡くなり、国土の大半と豊かな文化遺産はがれきの山と化した。

 ISによる攻撃が散発し、政治的緊張が続いているものの、現在国内の状況は比較的安定しており、国民は未来に期待を持ち始めている。1日まで5日間にわたり開催されたバビロン国際フェスティバルは、希望を象徴するものの一つとなった。

 国内はもとより、ヨルダンやセルビア、ロシアなどのアーティストの作品が、古代メソポタミア(Mesopotamia)を支配したバビロニア(Babylonia)の首都だったバビロンに展示された。

 シャイマさんは「私たちが経験した厳しい試練を考えると、根本的な変化が起こった」と語る。

 フェスティバルは1987年に初開催された。会場となっているバビロンは、国連連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)に登録されている。

 パフォーマンスのメイン会場は、アレクサンダー大王(Alexander the Great)が紀元前311年ごろに建設した劇場だ。

 会場のわずか数百メートル先には、フセイン元大統領が建てた宮殿の一つが残っている。

 石油資源が豊富なイラクでは、数百万人が貧困状態で暮らしている。汚職が横行し、インフラは破壊されたままのところが多く、文化事業は今でも後回しにされている。

 バビロン国際フェスティバルの責任者モハメド・ルバーイー(Mohamed al-Rubaie)氏は、私財を投じ開催にこぎ着けたと語った。

 会場近くの宗教学校からの苦情を受け、フェスティバルの開催直前にバビロン県知事が中止を要請するなどの問題もあった。しかし、フェスティバルは開催された。

 バビロンの南に位置するディーワーニーヤ(Diwaniyah)から訪れたアリ・サレー(Ali Saleh)さんは「歌いたければ自由に歌える」と語った。(c)AFP/Laure AL KHOURY