【3月20日 AFP】ロシア軍に包囲されているウクライナ南東部の港湾都市マリウポリ(Mariupol)で、孤児ら4〜17歳の子ども19人が、電気やガスの途絶えた療養施設で暖もなく、食料も底をつきつつある危険な状態に置かれている。

 保護団体職員や療養施設に避難していた人がAFPに明らかにした。孤児らは、ロシアが2月24日にウクライナに侵攻する前に、近隣の町からマリウポリ市内の、子どもの肺疾患専門の療養施設に預けられていた。

 マリウポリでは激しい戦闘が起きており、通信はほぼ完全に遮断。子どもたちとは連絡が取れない状態だ。

 療養施設に一時避難した後、最近、南部の都市ザポロジエ(Zaporizhzhia)に逃れたアレクセイ・ボロシュチュク(Alexei Voloshchuk)さんは、子どもたちは凍えるような地下室で身を寄せ合っており、2週間以上も入浴していなかったと語った。

 ロケット弾が近くに着弾し、療養施設の窓は割れた。ボロシュチュクさんは「暖房はなく寒い。8歳前後の女の子が、寒さが原因だという顔の傷を見せてくれた」と話した。

 子どもたちの面倒は医師と看護師2人、調理士が見ていた。地元警察も屋外で火をおこして調理した食べ物を持ってきてくれていたという。ただ、ボロシュチュクさんは、食料はじきに底をつくのではないかと心配している。

 マリウポリ北方の町で夫と共に里子を養育する施設を運営していた里親の一人、オルガ・ロパトキナ(Olga Lopatkina)さんは1月、6人の養子をこの施設に預けた。その後、町で戦闘が起きたため、残りの子どもたちと一緒に西部リビウ(Lviv)を経由して国外に避難した。マリウポリに取り残された子どもたちも一刻も早く救い出したいと願っている。

 ジュネーブを拠点とする慈善団体「ストップTB財団(Stop TB Foundation)」の代表ルシカ・ディティウ(Lucica Ditiu)氏は「子どもたちは孤児だ。最も弱い立場に置かれている」と言い、国外に退避させようと試みている。

 だが、マリウポリ市民には現在、自家用車しか脱出手段は残されていない。ディティウ氏は「最大の問題はどうやって現地から脱出させるかだ」と訴える。

 ディティウ氏は、子どもたちの面倒を見るため現地にとどまっている人たちをたたえた。「食べ物も水も尽きかけている中、地下室で19人の子どもたちと一緒に過ごすという状況は想像を絶する」 (c)AFP