【3月19日 東方新報】新エネルギー車(NEV)の製造・販売台数で世界一を誇る中国で、電気自動車(EV)のバッテリーの「大量廃棄時代」が到来している。リサイクル体制の整備は道半ばで、NEVを経済成長のけん引役に位置付ける中国にとって「待ったなし」の課題となっている。

 中国でNEVは、EVと燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHV)を指し、通常のハイブリッド車(HV)は含まない。中国自動車工業協会によると、中国でNEVの販売台数は2013年に1万8000台、2014年に7万5000台、2015年に33万1000台と増え続け、2021年には352万1000台に達し、自動車販売台数全体の13.4%を占めるようになった。

 最も売れているのはEVだが、EVを動かすバッテリーは徐々に充電能力が落ちてパフォーマンスも低下する。スマートフォンやパソコンを充電しても使える時間が短くなっていくのと同じだ。

 バッテリーの容量保証は国際的に8年ないし走行距離16万キロという基準が多い。ここ数年、中国で普及が始まった初期のEVのバッテリーが寿命を迎えている。統計によると、2021年の世界の車載用リチウムイオン電池の廃棄量は9万6850トンの見込みで、中国が94%を占める。

 中国の中央省庁はこれまでも「使用済み車載電池の総合利用に関する業界標準条件」を公表し、国が認定したリサイクル企業を「ホワイトリスト」に選び、リサイクルを促進してきた。ただ、認定企業が回収した量は想定を下回っており、業界関係者によると、使用済み電池の80%近くは正規ルート以外で取引されているという。

 使用済み電池からリチウムやコバルトを回収しても利益は少なく、不適格な小さな工場で環境保全基準を無視して処理されているケースも少なくないようだ。

 そんな中、中国の車載電池最大手、寧徳時代新能源科技(CATL)は昨年10月、湖北省(Hubei)に320億元(約5987億円)をかけて使用済み電池のリサイクル工場を新設すると発表。「自社の車載電池のライフサイクルを管理し、コストの抑制や製品の競争力向上につなげる」と説明している。

 車載電池大手の国軒高科(Goxuan High-tech)も昨年3月、安徽省(Anhui)に120億元(約2245億円)を投じて電池リサイクルなどの生産拠点を建設すると表明している。

 リチウムイオン電池正極材メーカーの容百科技(Ronbay Technology)と電池リサイクル企業の格林美(GEM)は最近、バッテリーリサイクル事業に関する戦略的提携協議に合意した。「上流」の製造企業が「川下」の電池リサイクルを担うシステムが構築されつつある。

 中国産NEVは現在、世界市場で50%以上のシェアを誇る。また、中国政府は2035年には新車販売の50%をNEVにすることを目指している。使用済み電池のリサイクル体制を確立すれば、NEV業界でさらに世界をリードすることになる。(c)東方新報/AFPBB News