【3月15日 東方新報】中国では昨年9月の新学期から、大都市の小中学生を対象に「学校の宿題」と「塾通い」を減らす「双減政策」が実施された。小学1~2年生には筆記式の宿題を出さない、3~6年生への宿題は1時間以内に終わる内容までとし、中学生は1時間半以内と制限。学習塾に至っては「既存の学習塾は非営利団体として再登記する」「週末や長期休暇に教育サービスを提供してはいけない」と定めており、実質は「学習塾廃止令」に近く、多くの学習塾が閉鎖している。

「中国版ゆとり教育」とも言われる双減政策には、「就学前の3~6歳児に対する学習塾(外国語も含む)を禁止」という項目もある。中国では幼稚園児の段階で「勉強漬け」になっているのが当たり前となっているためだ。親の指導やオンライン教育を通じ、小学校入学前には漢字5000字、英単語1000個を覚え、かけ算・割り算もマスターしている子どもは珍しくない。「4歳児で英単語を1500個マスターすれば十分でしょうか?」「米国で暮らすには十分ですが、(エリート地域の)北京市海淀区(Haidian)では足りないでしょう」という、ジョークとも本気とも分からないネット上のやりとりも話題にもなった。

 中国では一発勝負の大学入学試験「高考」で進学できる大学が決まり、その学歴で就職先も大きく変わる。「子どもを人生の勝者にしたい」という強い思いを抱く親は、就学前から子どもを勉強に向かわせている。こうした風潮には、子どもの健全な成長にはマイナスな「抜苗助長(苗を引っ張って成長を促す。実際には、苗が枯れてしまうという意味)」と言える行いであり、スマートフォンを使ったオンライン教育は「子どもを早い段階からスマホ中毒にしてしまう」と批判が出ている。

 ただ、「ウチの子を落ちこぼれにさせたくない」という親の気持ちにブレーキをかけるのは難しい。そのため、未就学児の学習制限は双減政策における重要方針の一つとなっている。中国には未就学児向け専門の教育アプリが数十種類あるが、北京市は最近、「未就学児向けのオンライン教育アプリはすべて運用を停止すること」と要請。政府方針の徹底を図っている。

 政府が双減政策を導入したのは、親の収入が高い家庭の子どもが受験戦争の「勝者」になっている実態を是正したい狙いがある。また、子ども1人当たりの教育費を削減することで2人目、3人目の子どもを産みやすくし、急激に進む少子化に歯止めをかけたい思惑がある。

 10歳に満たない段階で勉強漬けになっている子どもは「鶏娃」と呼ばれている。ニワトリの生き血を注射して元気になるという科学的根拠のない民間療法「打鶏血」をされたように、過度に勉強を押しつけられている子どもたち(娃は子どもの意味)を指す。「子どものため」と信じてひたすら勉強を求める親の過剰な愛情を、双減政策がどこまで引き留めることができるか注目される。(c)東方新報/AFPBB News