【3月11日 CNS】中国の春節(旧正月、Lunar New Year)の連休中(今年は1月31日~2月6日)、上海市や北京市の不動産市場は活況を呈したが、対照的に南部の広東省(Guangdong)深セン市(Shenzhen)では連休中、ほとんど取引がない事態となった。

 深セン市の楊光(Yang Guang)さん(仮名)は中古住宅を取り扱う不動産会社に勤務するが、数十人いた同僚で今も残っているのは10人未満となった。昨年から深センの不動産市場の低迷が深刻となっているためだ。「春節連休中、物件を案内したのは1件だけ。時間も5分すらかからなかった。

 深セン市不動産仲介協会によると、春節連休中の新築住宅の取引はゼロ、中古住宅もわずか1件で、業界に衝撃が走った。

 2021年の深セン市内の中古住宅販売戸数は4万699戸にとどまり、前年比で57.3%減少。過去15年間で最低値を記録した。今年1月の中古住宅販売戸数は1557戸。前年比75%減で、過去10年間で最低を記録した。

 楊さんは「市場が活発だった頃は年間30万元(約550万円)以上稼げたが、今はアルバイトも含めて月額4000〜5000元(約7万3364円〜9万1705円)しか収入がない」と嘆く。

 深セン市は昨年2月、不動産価格の高騰を抑える目的で、全国で初めて中古住宅に「指導価格」を設定。販売価格が指導価格より高い物件に対する銀行の融資を制限した。楊さんは「当時はそのニュースをあまり重要に感じなかった」と振り返るが、指導価格制度は市場に大きな影響を与えた。

 指導価格の設定は原則的に年1回で、市場に大きな変動があれば半年で見直す場合があるとしているが、広東省住宅政策研究センターの李宇嘉(Li Yujia)主任研究員は「実質価格の変動に応じて参考価格を調整すると、それが不動産市場に不安定をもたらす要因になりかねない」とジレンマを語る。

「投機目的で不動産を購入する投資家が市場から手を引いたが、純粋にマイホームを求める市民のニーズは変わっていない」と話す楊さん。不動産市場が健全な形で回復することを期待している。(c)CNS/JCM/AFPBB News