【3月8日 東方新報】日本フィギュアスケートの羽生結弦(Yuzuru Hanyu)選手は中国で謎の人気を博している。今回の冬季オリンピックで「3連覇」は果たせなかったが、中国のマスコミは彼への愛を惜しみなく伝えている。北京から離れる日には大勢のファンが空港まで見送りに行った。日本オリンピック委員会(JOC)を通じて、羽生選手も「今回は今までの人生の中で一番支えられた参戦だ」と心境を吐露した。

 中国人は、羽生選手が鳳凰の苦難を経て生まれ変わる自己啓発の物語を解釈したことによって彼に魅了された。天賦の才のある人と比べ、人々は後天的な努力で天に逆らい運命を変える者により多くの敬意と敬慕を持っている。これも元NBAスター選手のコービー・ブライアント(Kobe Bryant)氏が全世界で「ファンを自分のものにする」原因の所在だ。幼い頃から病弱だった羽生選手は、体を丈夫にするためにフィギュアスケートの道を歩んできたが、氷上では常人には及ばない力と芸術美を残した。2014年と2018年の冬季オリンピックで、彼は2度男子シングルの表彰台の一番高いところに立った。デビュー以来、10回以上も世界記録を塗り替えた。羽生選手の監督が言ったように、命知らずの頑張り方こそが彼の最大の才能だ。彼のサクセスストーリーは、多くの人に自分の壁を突き破り、夢を実現する可能性を見せ、一般の人を魅了した。

 中国人は、羽生選手が人生に上限を設けない執念によって彼に魅了された。どんな業界でもトップに立つということは、想像を絶するほどの汗と涙を流さなければならない。ある人は華々しいうちに思い切って一線から退くことを選ぶだろうし、ある人は名声を守るために「寝そべる」ことを選び安定を求めるだろう。人間の限界である「地獄アクション」と呼ばれる4回転アクセル(4A)に挑戦する必要はなかったが、羽生選手にとって、優勝ではなく、奇跡を創造し続け、不可能を可能にすることこそ究極の目標だ。羽生選手が言ったように、「4Aがあるから、こんなに生き生きと生きることができた。(4Aは)自分がフィギュア選手として人生をかけた最後の夢だ」。「金メダル、銀メダル、銅メダル」ではなく、「より速く、より高く、より強く」をオリンピックのモットーとして掲げ、人類に限界に挑戦してほしいと訴えたオリンピック精神が、羽生選手の行動にこれ以上になく体現されていた。

 中国人は、羽生選手が見せた競技の範疇を超えたものによって彼に魅了された。スポーツ競技は決して国際スポーツイベントのすべてではない。互いに協力し、相互に意思疎通することにより、互いの理解と友情を増進することこそがより高次の目標だ。2017年フィギュアスケート世界選手権の授賞式で中国選手が逆さまに持っている国旗を調整してあげたり、2018年平昌オリンピックでは、順位を逃した中国選手を抱擁し、中国語で励ましてあげたり、北京冬季オリンピック期間中に、スタッフの氷の補修を助けてあげたり、控え室で中国選手と一緒に「指ハート」をしたりした。羽生選手のこのような謙虚さと優しさは、日中友情の美談を記し、両国民衆の「感情の共鳴」を体現した。

 オリンピック放送機構(OBS)のヤニス・エクサルコス(Yiannis Exarchos)最高経営責任者(CEO)は、「多くの課題や行き違いがある今、羽生選手は前向きな雰囲気を作り出している。彼のような選手が増えていってほしい」とコメントした。

 このような羽生選手が、人に好かれないはずがない。(c)東方新報/AFPBB News