【3月8日 AFP】米政府がウクライナ危機をめぐりロシア産原油の禁輸措置を検討していることを受け、7日の各国株式市場では株価が急落する一方、金価格は史上最高値を更新、原油先物も急伸した。

 米株式市場のダウ工業株30種平均(Dow Jones Industrial Average)は3営業日連続で下落し、前週末終値比2.4%安の3万2817.38ドルで終了。香港市場も4%安となったほか、ドイツ、英国、フランスなど欧州株も軒並み下落し、世界同時株安の様相を呈した。

「ロシアのウクライナ侵攻により(米経済の)ファンダメンタルズ(基礎的条件)が根本的に変わり、インフレ圧力の高まりが予想以上に長引く結果、今後2年以内に景気後退に陥る可能性が出てきた」と、外国為替証拠金取引(FX取引)会社オアンダ(Oanda)のアナリスト、エドワード・モヤ(Edward Moya)氏は語った。

 英投資会社AJベル(AJ Bell)の投資ディレクター、ラス・モールド(Russ Mould)氏は「次の段階として考えられるのは、各国がロシア産の原油やコモディティー(一次産品)を対象に禁輸措置を発動し、ロシアの戦費調達が阻害されることだろう」と予想した。

■原油禁輸の影響

 米国のアントニー・ブリンケン(Antony Blinken)国務長官は6日、ジョー・バイデン(Joe Biden)政権と同盟国はロシア産原油の禁輸措置について協議中だと明らかにした。これに対しドイツのオラフ・ショルツ(Olaf Scholz)首相は、欧州のエネルギー安全保障を脅かしかねないとけん制した。

「(ロシア産)原油を禁輸しても米国にとってはおそらく問題ないだろうが、欧州が難局に直面するのは明らかだ」と、英CMCマーケット(CMC Markets)のアナリスト、マイケル・ヒューソン(Michael Hewson)氏は述べた。

 原油の代表的指標である北海ブレント(Brent North Sea)先物価格は7日、一時1バレル=139.13ドルと、約14年ぶりの高値を付けた。欧州の天然ガス先物もエネルギー供給への懸念から過去最高値を更新した。

 ロシアによるウクライナ侵攻開始以来、他のコモディティー価格も急騰している。安全資産とされる金の先物価格は一時1オンス=2000ドルの節目を突破。アルミニウム、銅、ニッケル、パラジウムも軒並み高騰している。

■スタグフレーションも

 インタファクス・ウクライナ(Interfax-Ukraine)通信によると、世界有数の小麦輸出国であるウクライナは、小麦の輸出量を制限。これを受け、小麦も高騰している。

 物価高騰は各国中央銀行の悩みの種となっている。新型コロナウイルス禍の中、各国は景気刺激策を導入したが、現在は縮小しつつある。各国中銀は、ウクライナ危機前にすでに数十年ぶりの高水準にあったインフレを抑制するため、利上げに着手している。

 インタラクティブ・インベスター(Interactive Investor)で株式市場を担当するリチャード・ハンター(Richard Hunter)氏は「(物価上昇と景気悪化が同時進行する)スタグフレーションの懸念も出てきた。世界経済が成長することでインフレ圧力の高まりを克服できる公算は小さいからだ」と分析する。

 国際通貨基金(IMF)は、ウクライナ侵攻とロシアへの制裁は世界経済に「重大な影響」を及ぼすと警告している。(c)AFP