【2月10日 AFP】中国で先週、動画配信大手「ビリビリ(Bilibili)」に勤める男性(25)が脳出血のため急死し、IT業界にはびこる長時間労働文化をめぐる議論が再燃している。ビリビリは男性の死を「警鐘」と受け止めると発表した。

 男性は不適切動画の監視・削除を担当するコンテンツモデレーターで、春節(Lunar New Year、旧正月)の7連休中も休まず勤務していたとされる。

 ビリビリは8日夜、従業員の死亡を認め、遺族に謝罪したことを明らかにした。同社の発表は「この優秀な従業員の死は当社にとって大きな損失であるだけでなく、警鐘でもある」「悲劇を繰り返さないため、従業員の健康状態のチェックを積極的に改善しなければならない」としている。

 中国では近年、IT系企業で働く若者の突然死が相次いでいる。中国のIT業界には、朝9時から夜9時まで週6日間働くことを意味する「996」と呼ばれる悪名の高い労働慣行があり、かつては電子商取引(EC)大手アリババ(Alibaba、阿里巴巴)創業者の馬雲(ジャック・マー、Jack Ma)氏ら実業家も推奨していた。

 今回のビリビリ従業員の死を受けて、再び「996問題」が論議を呼んでいる。

 ソーシャルメディアの微博(ウェイボー、Weibo)では7日、「ビリビリ従業員が春節の残業で急死」というハッシュタグが拡散した。死亡した男性が超過勤務を強いられていたとする匿名の同僚の話を伝える記事が、労働問題ブログに掲載されたのが発端だった。

 同日、男性の親族を名乗るユーザーがブログ記事に謝意を述べる長文をウェイボーに投稿し、ビリビリは従業員の死を公表しないつもりだったと批判。この投稿には87万件を超える「いいね」が付いた。

 また、ビリビリ従業員だと主張する複数のユーザーが、同社は春節の連休中、コンテンツモデレーターに休憩なしの12時間シフトを強要したと非難した。

 ビリビリは死亡した男性従業員について、4日午後に欠勤し、病院で治療を受けたが脳出血のため同日夕方に死亡したと発表した一方、超過勤務疑惑に関しては否定。この従業員は「春節のシフト勤務で、1日8時間の勤務を5日続けた後、2日間の休日を割り当てられていた」と説明している。(c)AFP