【11月11日 AFP】ほかほかの料理を予約時間ぴったりに届け、中国の料理宅配大手「美団(Meituan)」のアプリで配達完了ボタンを意気揚々とタップした配達員のチュアン・チェンファ(Zhuang Zhenhua)さんは、次の瞬間、報酬の半分を罰金として没収されてしまった。アプリの不具合で配達時間に遅刻したと誤って記録されてしまい、自動的に罰金が科されたのだ。

 チュアンさんはこのアプリのシステムについて、活況を呈する料理宅配業界においてさえ企業が労働者を搾取するさまざまな手法の一つだと指摘する。

 中国当局は料理宅配業者の取り締まりを強化しており、美団や電子商取引(EC)大手アリババ(Alibaba、阿里巴巴)傘下のEle.meといった業者に対し、適切な報酬の支払いや保険加入などの基本的な労働者保護を確立するとともに、危険運転の助長につながっているアプリのアルゴリズムを是正するよう求めている。

 だが、AFPの取材に応じた十数人の配達員は、現場ではほとんど何も変わっていないと訴えた。

 チュアンさんによると、予約時間に間に合うよう配達を完了するためには「猛スピードで走ったり、(中略)赤信号を無視したり、道を逆走したり」する以外に方法がない場合が多い。当初は距離2キロまでの注文1件につき40~50分が割り当てられていた配達時間は、今は30分しか与えられないという。

 新型コロナウイルス流行とそれに伴うロックダウン(都市封鎖)によって、料理宅配サービスの需要は急増した。中国飯店協会(China Hospitality Association)によれば、今や市場規模は6640億元(約11兆8000億円)に上る。

 迅速な配達を約束する中で、配達時間の短縮が事故につながるケースが近年増えている。