【2月10日 AFP】イラクに7日、略奪されていた粘土版331点を含む多数の古代遺物がレバノンから里帰りした。

 レバノンから返還されたのは、個人が所有していた、くさび形文字が刻まれた粘土板などで、返還事業は同国のナブ博物館(Nabu Museum)が主導した。

 イラクでは、2003年の米軍の侵攻やイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の台頭などに伴う戦乱の中で、古美術品の略奪が相次いだ。イラク政府は略奪品の返還を各国に働き掛けている。

 同国考古遺産庁によると、今回返還された粘土版の時代はさまざま。紀元前2400年ごろに樹立されたアッカド(Akkad)王国やシュメール人のウル(Ur)第三王朝、古代バビロン(Babylon)帝国のものも含まれている。

 ユーフラテス(Euphrates)川のほとりに栄えた古代都市ウルは、くさび形文字が最初に使われた地とされる。

 レバノンのベイルート国立博物館(National Museum of Beirut)で6日に行われた返還式典で、イラク側に遺物が引き渡された。イラク考古遺産庁のライス・マジド・フセイン(Laith Majid Hussein)長官は記者会見で、レバノン政府とナブ博物館の館長に謝意を表明した。

 「知恵と書記」をつかさどるメソポタミア神話の神「ナブ(Nabu)」の名を冠したナブ博物館は、2018年に開館。レバノン国内のほか、イラクやシリア、エジプト、イエメンなどの古代遺物を展示している。

 今回イラクに返還されたのは個人が所有していたもので、一部はゼイナ・アクル(Zeina Akar)前国防相の夫ジャワド・アドラ(Jawad Adra)氏が所有していた。

 近年、多くの略奪品がイラクに返還されているが、米国からの返還が大部分を占めている。(c)AFP