ギルガメシュ叙事詩の粘土板、米からイラクに返還
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【9月24日 AFP】30年前に盗まれ米国に密輸された「ギルガメシュ叙事詩(Epic of Gilgamesh)」を記した3500年前の粘土板が24日、イラクに返還された。
米首都ワシントンで行われた式典で粘土板を受け取ったイラクのハッサン・ナディム(Hassan Nazim)文化相は「私にとって、イラク社会の誇りと自信を取り戻すことを意味する」と語った。
ギルガメシュ叙事詩は、古代メソポタミアの王ギルガメシュ(Gilgamesh)が不死を求めて放浪する物語で、世界最古の文学作品の一つとされる。粘土板はくさび形文字で刻まれており、小さいながらも文化的・歴史的価値は極めて高い。
国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)のオードレ・アズレ(Audrey Azoulay)事務局長は、ギルガメシュ叙事詩は「人類共通の宝」だとし、粘土板が本来あるべき場所に返ることは「遺産の破壊者に対する国際社会の大きな勝利だ」と述べた。
粘土板は、湾岸戦争(Gulf War)が起こった1991年にイラクの博物館から盗まれたと考えられている。ケネス・ポライト(Kenneth Polite)米司法省刑事局長によると、2001年に英国で発見された。
米国の美術商が03年、ロンドン在住のヨルダン人一族から購入。米国に密輸し、偽の鑑定書を付けて07年に5万ドル(約550万円)で古美術商に売却した。
さらに14年には、ハンドメード用品チェーン「ホビーロビー(Hobby Lobby)」のオーナー一家で、キリスト教原理主義者のグリーン家が、ワシントンに所有する「聖書博物館(Museum of the Bible)」で展示するため、167万ドル(約1億8400万円)で購入した。
だが、17年に博物館の学芸員が鑑定書の不備に気付き、19年についに押収された。
イラクでは、数十年にわたり歴史的文化財が略奪されている。米国は今夏、約1万7000点の文化財をイラクに返還したが、その大半はメソポタミア最古の文明の一つである約4000年前のシュメール王朝時代のものだった。(c)AFP