【2月6日 東方新報】中国のケンタッキーフライドチキン(KFC)が1月に限定フィギュア付き食事セットを販売したところ、客の間で激しい争奪戦が繰り広げられた。1人で1万元(約18万円)分を購入した「爆買い」の客がいれば、入手したフィギュアを10倍で売る転売ヤーも登場。さらには「お金をくれたら代理で食事セットを食べ、フィギュアだけ送ります」という「食事代行サービス」まで現れ、中国消費者協会(CCA)が「KFCの商法に問題がある」と表明する事態に発展した。

 フィギュア付きセットはKFCの中国進出35周年を記念したもので、1月4日から「盲盒(ブラインドボックス、Blind Box)」形式で発売された。日本の「ガチャガチャ」がルーツのブラインドボックスは、箱を開けるまで中身が分からないのが人気となり、若者を中心に中国で大ブームとなっている。

 KFCがセットにつけたのは、フィギュア大手ポップマート(Pop Mart)の人気シリーズ「Dimoo」のKFC限定版。かわいい男の子がKFC創業者カーネル・サンダース(Colonel Sanders)氏にふんしたフィギュアなど6種類あり、さらに72分の1の確率で「隠れバージョン」も用意。大都市部のKFC店舗に限り計26万3880個を販売すると、各店舗にフィギュア目当ての客が殺到した。

 フィギュアは北京ダック巻き、ピリ辛チキンバーガー、チキンナゲット、エッグタルト、ポテト、コーラとセットで99元(約1780円)。食事量は1セットで2~3人分だが、1人で6セット以上買う客が続出した。ある客は一度に106セットを1万494元(約18万8715円)で購入したレシートを公開した。

 大都市から離れた地方ではセットを売っている都市部の店舗に行けない人も多い。そこで、「電子マネーで70元(約1258円)送ってくれたら、食事だけ私が食べて、フィギュアは封を開けずに送ります」という「食事代行サービス」がネット上に登場。中国版ツイッター「微博(ウェイボー、Weibo)」で話題になり、「代食」をめぐる投稿が1億回以上閲覧された。

 多くの店舗では発売から2~3日で用意したセットが売り切れた。すると中古品を専門に売るサイトでKFCフィギュアが売られ始めた。6種類そろったセットが1800元(約3万2369円)で取引され、隠れバージョンにいたっては単体でセット価格の10倍の999元(約1万7965円)で販売されている。

 こうした「フィギュア狂騒曲」には批判もわき起こった。中国消費者協会は「ブラインドボックスを使った販売方法は消費者の衝動買いをあおり、必要量を超えて購入させる手法だ。食料の大量廃棄にもつながり、公序良俗に反する」と声明を発表した。中国では国を挙げて「食品ロス」をなくす運動に取り組んでおり、昨年4月には「反食品浪費法」を制定。飲食店は消費者が過剰に食事を注文することを止める義務を背負っている。

 KFCは1987年に中国第1号店を北京に開店。中国人にとって外資系ファストフードの象徴の一つで、現在も全土に8000近い店舗を擁する。ただ、ファストフード店の林立や若者の健康志向により、カロリーが高いイメージのKFCは客層が「高齢化」していると言われる。中国KFCの昨年第3四半期(7~9月)の売り上げは前年同期比で31%減少し、利益率も前年同期の18.6%から12.2%に落ちている。

 中国メディアは「今回のフィギュア付きセットの販売は、若者がハマっているブラインドセットで若い消費者を取り込もうとしたのだろうが、長期的に若者層をひきつけるにはKFCのメニューやイメージ自体を見直す必要がある」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News