独エネルギー安保、難局に ウクライナ情勢緊迫化で
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■痛み伴う
ただし、ドイツにとって、エネルギーのロシア依存からの脱却は痛みを伴う。鉱業・化学・エネルギー労働組合(IG BCE)のミハエル・バシリアディス(Michael Vassiliadis)委員長は「ドイツがロシア産ガスとノルドストリーム2を断念しても直ちに停電することはないだろうが、(エネルギー)コストは増し、将来のガス供給をめぐる未解決の問題が深刻化することになる」と語る。
目標期限が設定されている中、ドイツ政府は国土面積の2%に当たる敷地に風力タービンを建設し、建造物の屋根や屋上に太陽光パネルの設置を義務付ける大規模な計画に着手した。ロベルト・ハベック(Robert Habeck)副首相兼経済・気候保護相は1月、「化石燃料の段階的廃止によって欧州は地政学的な強さを増すとともに、気候変動問題から身を守ることにもつながる」と述べた。
とはいえ、フラウンホーファー研究機構(Fraunhofer Institutes)によると、ドイツでは今年末までの脱原発、2030年までの石炭火力発電の停止方針が決まっているため、今後8年間でガス火力発電の容量を30%以上増やす必要がある。
■代替案
ロシアへの依存度を近い将来、低減するため、ドイツ政府は輸入の多角化に乗り出している。「代替案」の一つは、欧州の液化天然ガス(LNG)貯蔵施設から調達することだと、経済・気候保護省の関係者は話した。
ただその場合、米国やオーストラリア、カタールなどから天然ガスを新たに輸入することになり、コストが高くつくという。
エネルギーコストが増大すれば、すでにインフレが高進しているドイツとユーロ圏に一段と物価上昇圧力がかかる恐れがある。一方で、ドイツ国内のガス貯蔵量は現在、貯蔵能力の42%以下と極めて低水準に落ち込んでおり、容易ならざる状況に直面している。(c)AFP/Florian CAZERES