【2月3日 AFP】ウクライナ情勢をめぐって対ロシア関係が緊迫化する中、ドイツではロシア産天然ガスへの過度の依存が浮き彫りになり、エネルギー価格高騰問題と相まって、対応に苦慮している。

 欧州の経済大国ドイツは、2030年までにクリーンなエネルギー源への移行を進める目標を掲げている。原子力や石炭に代わる電源として、太陽光・風力発電施設を増強する。それまでは、不足分を天然ガスで補う計画だった。

 しかし、ドイツの天然ガス輸入に占めるロシア産の割合は55%と、2012年の40%から拡大。仮にロシアがウクライナに侵攻すれば、ドイツのエネルギー改革計画は頓挫しかねない。

 天然ガスはドイツのエネルギー需要の26.7%を占める。2世帯に1世帯は暖房用に使用している。オラフ・ショルツ(Olaf Scholz)政権は、対ロシア制裁が発動されれば、ドイツ経済も打撃を受けると認めている。

 具体的には、安価なロシア産天然ガスの調達を倍増させるために建設されたパイプライン「ノルドストリーム2(Nord Stream 2)」の行方が、微妙な情勢となってきた。アナレーナ・ベーアボック(Annalena Baerbock)外相は、ウクライナ侵攻が現実となれば、ノルドストリーム2も制裁対象になると警戒している。

 ノルドストリーム2の総事業費は100億ユーロ(約1兆2900億円)とされる。アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)前政権下では、再生可能エネルギーへの移行期間において、カギを握る「つなぎ」的な選択肢と位置付けられていた。それに対し、他の西側諸国やウクライナは、ロシアへのエネルギー依存を一段と高めることになると繰り返し警告してきた。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は、ノルドストリーム2について「クレムリン(Kremlin、ロシア大統領府)の危険な地政学的武器」と反発している。