【1月30日 東方新報】「奨励食品節約 反対浪費(食品を節約し、浪費をやめよう)」「光盤(皿を平らげる)行動」…。中国の街角や飲食店、スーパーなどでこうしたスローガンが目立つようになった。政府が国を挙げて、食品ロス防止運動に取り組んでいるためだ。

 面子(メンツ)を何よりも重んじる中国では、客が食べきれない量の料理を並べてもてなす文化がある。中国を訪れた日本人が「食事を残しては失礼」と無理して食事を平らげ、驚いた中国人がさらに料理を追加する、というエピソードもよく聞く。中国では割り勘をせず年長者などがまとめて代金を支払うことが多い。このため中国人同士の会食でも、ホスト役が参加者に満足してもらうよう食事を多めに注文することが一般的だ。

 こうした伝統を変えようと、昨年4月には食べ残しを禁止する「反食品浪費法」が可決、施行された。過剰な注文をして食べ残した客に飲食店側が処分費用を請求できるとした一方、店側も客に大量注文させた場合は1万元(約18万円)の罰金が求められる。さらにテレビやインターネットで流行している「大食い番組」を禁止し、守らなかったテレビ局や動画配信業者に最高10万元(約181万円)の罰金を科す。食堂がある役所や学校、食事の宅配サービスをする業者にも食品ロスを防ぐ対策を求めている。

 また、中国経済のマクロ政策を担当する政府機関・国家発展改革委員会は昨年12月、反食品浪費法に基づく方針を発表。食品業界や観光業界が食品ロスを防ぐ自主基準を設けるよう指導したほか、中国ではあいまいとなっている食品の「賞味期限」と「消費期限」を明確化し、期限切れが間近な食品も廃棄せずに割引販売や福祉団体への寄付といった措置を図るよう求めている。

 中国社会科学院によると、中国の都市部では、数千万人を養うことができる量に相当する年間1800万トンの食品が廃棄されている。実際のフードロスは3500万トンに上るという報道もある。

 中国では米、小麦、トウモロコシといった主要穀物の自給率は100%に近いが、大豆など海外からの輸入に頼る食料も多い。食料資源が世界的に限界を迎えていることへの危機感や、新型コロナウイルス感染症の影響で海外からの輸入が不安定になっていることも食品ロス削減を求める一因となっている。

 中国社会で最も重視されている春節(旧正月、Lunar New Year)が近づいている。今年の春節は2月1日で、前日の1月31日から2月6日までが連休となっている。春節期間中は家族や知人同士で会食を楽しむのが伝統だが、食品ロスが徹底されるかどうかの試金石となりそうだ。(c)東方新報/AFPBB News