「旧正月の帰省をやめたら特別手当支給」 中国が2.5億人の出稼ぎ工に優遇策
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【1月25日 東方新報】中国人が一年で最も大切にする春節(旧正月、Lunar New Year)が近づいている。今年の春節は2月1日で、前日の1月31日から2月6日までが連休となる。この期間は家族や親族、友人とだんらんを楽しむのが伝統だ。約2億5000万人の農民工(出稼ぎ労働者)も通常は故郷へ帰るが、新型コロナウイルスの拡大を防ぐため、政府は「現地で年越し」を奨励。各地では帰省しない農民工に特別手当を与えるなどの優遇措置を取っている。
経済先進地域で中小企業も多い浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)は12日、春節期間中に杭州にとどまる農民工らに1人500元(約8975円)の電子マネーかクーポン券を特別支給すると発表。杭州市労働組合連合会は、帰省できない農民工2000人に代わってそれぞれの実家に合計30万元(約538万円)相当の新年のプレゼントを届けるほか、2万人の農民工に計40万元(約718万円)相当の福袋を与える。
古くからの商業地で貿易港がある同省温州市(Wenzhou)は、50~99人の農民工が現地にとどまった企業に50万元(約898万円)、100人以上残る企業に100万元(約1795万円)の補助金を出す。また、企業が春節以外の時期にフレックス休暇や時差休暇を導入することも奨励している。
「100円ショップの卸売街」として有名な同省義烏市(Yiwu)は春節期間中の駐車場や市バス、観光地はすべて無料とし、帰省しない農民工に1人300~500元(約5385~8975円)を支給する。ハイテク産業の工場が多い安徽省(Anhui)合肥市(Hefei)は1人1000元(約1万7950円)を支給。広東省(Guangdong)の中心的工業都市・佛山市(Foshan)は総額1億6000万元(約28億7214万円)をかけて特別ボーナスなどを提供する。
家電産業や紡績業が盛んな浙江省寧波市(Ningbo)は、現地にとどまる農民工らに総額5000万元(約9億円)分の職業技能訓練チケットを無償で譲渡。旋盤・組み立て作業など50種類の職業訓練を受けられる。「人に魚を与えるより、魚を捕る方法を教えよ」という中国のことわざにある手法で現地での年越しを奨励している。
農民工は企業と年間契約を結び、建設現場や工場で宿舎と食事の提供を受けながら働き続け、春節前に1年分の給料を受け取る形が多い。契約が終わり1か月ぐらい故郷で過ごす人も多く、今年も既に実質的な春節シーズンは始まっている。2億5000万人の農民工が一斉に長距離移動をして実家へ帰り、家族や友人らと連日飲食を楽しむとなると、新型コロナウイルスが全土に広まる恐れがある。春節期間中の2月4日から北京冬季五輪も始まるため、中国政府としてはコロナ禍に見舞われることは特に避けたい。
とはいえ、1年間のつらい労働を終えて、家族が待つ故郷に帰りたいというのが農民工の心情。春節中も宿舎を開放してパーティーを開き、それぞれの故郷の料理をふるまう企業もあるが、どれだけ農民工の心をつなぎとめられるかが注目される。(c)東方新報/AFPBB News