【1月31日 AFP】エチオピアのアビー・アハメド(Abiy Ahmed)首相は今月初め、エチオピア正教会のクリスマスメッセージで「国民の和解」を呼び掛け、14か月以上続く内戦に終結の糸口が見えたかに思われた。だが、人道支援団体によると、その日のうちに北部ティグレ(Tigray)州の避難民キャンプが無人機の爆撃を受け、50人以上が死亡した。

 続いて小麦粉工場と教会にも無人機攻撃があり、医師や地元当局らによれば少なくとも21人が死亡した。これらの空爆から、国連(UN)推計でこれまでに数千人が死亡し数十万人が飢餓の瀬戸際に追い詰められているエチオピア内戦で、無人機が中心的役割を担うようになっていることが明らかになった。

 それに伴い、民間人の安全への懸念も高まっている。エチオピア政府は無人機の配備計画について無言を貫いているが、反政府勢力「ティグレ人民解放戦線(TPLF)」が支配するティグレ州に地上軍を派遣するよりも、空爆に熱意を注いでいるように見える。

 エチオピアにおける戦闘状況を監視してきたオランダの平和団体「PAX」の専門家は、ここ数か月間にトルコ製、中国製、イラン製の無人機が配備されたことが空爆後の画像から確認できると指摘。「エチオピアは現在、アフリカ大陸で最も無人機を多用している国だと考えて間違いないだろう」と述べた。

 エチオピア内戦は2020年11月、アビー首相が当時ティグレ州の与党だったTPLFが連邦政府軍の拠点を攻撃したと主張し、報復として同州に進軍して始まった。政府軍側は一時、州の大部分を制圧したが、昨年6月からTPLFが勢力を盛り返したことで撤退を余儀なくされた。

 ティグレ州のほとんどを奪還したTPLFは、隣接するアファール(Afar)州とアムハラ(Amhara)州に攻勢をかけ、昨年11月には首都アディスアベバまで約200キロに迫った。首都では住民が緊急避難し、米仏などは自国民に国外退避を呼び掛ける事態となった。

 しかし、アビー首相の前線慰問もあり、政府軍の反攻によって潮目は再び変わった。TPLFは先月、ティグレへの撤退完了を発表。今のところ政府は地上軍による追撃をほぼ行っていない。

 シンクタンク「国際危機グループ(ICG)」は、政府が状況を一変させた背景として、無人機の存在がカギだったと指摘する。無人機は攻撃能力に加え、監視の用途でも軍に大きな利益をもたらす。

 無人機の運用により死者が出ることについては、アビー首相の支持者のほか一部の反首相派も、戦闘が続く限りは完全に合法だと主張している。(c)AFP/Robbie COREY-BOULET