【1月22日 東方新報】中国の北京大学(Peking University)が最近発表した「全国大学卒業生就職リポート」が大きな反響を呼んでいる。注目を集めたのは、2021年6月に大学・大学院を卒業・修了した就職した若者の初任給だ。

 北京大学が全国2万人の卒業・修了生にアンケートしたところ、大学院の博士課程を修了して就職した人の平均初任給は1万4823元(約26万6956円)、修士課程修了生は1万113元(約18万2131円)、大学卒業生は5823元(約10万4869円)、専科(短大、専門学校に相当)が3910元(約7万417円)だった。インターネットでは「大卒の初任給は5823元」がホットワードになり、一時は検索件数が新型コロナウイルス関連のニュースを上回った。

 博士課程と専科の初任給を比べると、約3.8倍の差がある。日本でも最終学歴によって初任給が異なることは一般的だが、中国はその差が顕著だ。リポートの中央値で見ても、博士が1万5000元(約27万円)、修士が9000元(約16万2086円)、大学が5000元(約9万円)、専科が3500元(約6万3033円)となっている。ただ、いずれも平均収入は新型コロナウイルス感染症が広がる前の2019年より増えており、コロナ禍でも経済成長をキープする中国経済の底堅さを反映している。

 一方で、北京大のリポートは必ずしも学生たちの「平均値」を表しているとは言い切れない。中国では大学卒業イコール就職とは限らないからだ。若者の半分以上が大学に進学し、2021年の大学卒業者数は過去最高の909万人に達したが、卒業と同時に就職した学生は6割弱といわれている。急増する学生数と企業側のホワイトカラーの募集枠に大きなギャップがあることが大きな要因。魅力的な仕事と高給を求める卒業生は焦らずに就職先を探し、2015年ごろから「慢就業(ゆっくり就職)」という言葉が広がり始めた。現場の労働者などは各地で慢性的に不足しているのだが、若者の求人率が高いのに失業率も高いという現象が続いている。

 学生と企業の「駆け引き」が続く中で、北京大学や清華大学(Tsinghua University)などの名門大学は別格。高給を提示したり住居を用意したりと、特別待遇で募集する企業は少なくない。スマートフォン大手の中国企業・華為技術(ファーウェイ、Huawei)が超優秀な若手研究者を高給で雇う「天才少年プロジェクト」を実施し、華中科技大学(Huazhong University of Science and Technology)コンピューター専攻の博士課程を修了した若者が2020年に年俸201万元(約3619万円)で入社したことは話題を呼んだ。若者の就職事情は、中国の激しい学歴社会・競争社会を象徴している。(c)東方新報/AFPBB News