【1月19日 AFP】国際オリンピック委員会(IOC)が定めたトランスジェンダー選手に関する新たな指針に対して、女子大会の品位を損ねるリスクがあると、38人の医療専門家が研究で疑問を呈した。

 IOCが昨年11月に定めた新たな枠組みでは、女子の大会に出場するトランスジェンダー選手が不当なアドバンテージを得ていると自動的にみなしてはならないということになった。IOCが2015年に発表した指針から置き換えられたこの枠組みでは、トランスジェンダー女子選手の出場に向けて、テストステロン値を抑制するという要件も取り除かれた。

 しかし、医学雑誌「Open Sport and Exercise Medicine」に掲載された論文は、この指針が「主に人権の観点から起草されたもので、医学的、科学的問題の検討が足りていない」と述べた。

 IOCは2年をかけて参加者250人以上と広範に協議したが、一貫した立ち位置を確立するには至らず、大会出場の基準に関する判断は各競技の統括団体に任せた。

 今回の論文に署名した中には、ワールドアスレティックス(World Athletics、世界陸連)の医療部門のトップや、国際自転車競技連合(UCI)の医療部長、国際ボート連盟(World Rowing)の医療委員長も含まれている。

 専門家は、枠組み導入の権限を持たない競技団体に責任を委ねたことを疑問視し、IOCに対して「競技の公平性と全ての国際連盟が従うことができる最善の科学を土台に、基準と期待する内容を定める責任を負う」ことなどを提言している。(c)AFP