【1月15日 東方新報】世界の新エネルギー車(NEV)の半分以上を保有している中国で昨年12月末、NEV専用の自動車保険が導入された。ガソリン車にはないバッテリー火災なども保険の対象にしているが、ユーザーの間では「保険料が値上がりした」と反発も起きている。

 昨年12月末、中国で生産されている米テスラ(Tesla)のSUV「モデルY」のオーナーが「12月23日に8278元(約14万8504円)だった保険料が27日から1万4000元(約25万1155円)以上になった。一夜にして80%も値上げされた」とインターネットに投稿し、大いに話題となった。また、テスラのセダン「モデル3」を最近購入したユーザーも「車を取りに行くのが遅れたら、約8000元(約14万3517円)の保険料が約1万8000元(約32万2914円)にはね上がっていた」と訴えた。

 テスラ社は「保険料は全国平均で約10%増加し、高性能車両でも平均20%以内。個別の案件は各地の保険会社に委ねている」と説明している。

 NEV専用保険はテスラだけでなく他社の電気自動車などでも導入された。東南大学(Southeast University)法学院准教授で交通法規発展研究センター執行主任の顧大松(Gu Dasong)氏は「NEV専用保険の誕生は新エネルギー自動車産業にとって朗報だ。従来の自動車保険ではカバーできなかった問題を解決する」と指摘する。専用保険では、NEV特有のバッテリー、モーター、コントローラーのトラブルを補償する上、充電中のトラブル、さらに停車中のバッテリーの自然発火も対象とし、周囲に与えた被害の賠償も適用される。

 中国政府は2035年以降に販売する新車をすべてNEVなどの環境対応車にする方針を掲げ、NEV購入者に補助金を支出している。中国全体の自動車販売台数が伸び悩む中、NEVだけは急激に売れ行きを伸ばしており、昨年9月の月間販売台数ではNEVの占有率は21.2%と2割台に達した。

 一方で急成長に伴い、バッテリーの自然発火や充電トラブルも増えている。そのためNEV専用保険の登場はユーザーにも社会にとっても有用なものだが、「NEVを買って浮いたガソリン代が保険料に消えるだけだ」というユーザーの嘆き節は多い。

 中国全国乗用車市場情報連合会の崔東樹(Cui Dongshu)事務局長は「専用保険の発売は非常に良いことだ。ただ、保険料が高騰すればNEVの買い控え現象が起きる恐れがある。自動車会社が自ら専用保険を作ることも検討してほしい」と呼びかけている。(c)東方新報/AFPBB News