【1月14日 東方新報】中国では近年、日本や韓国などで人気商品を買って国内で消費者に転売する「代購(代理購入)」ビジネスが花盛りだったが、コロナ禍や国内消費市場の変化で壊滅状態となっている。

 北京に住む30代の女性、汪さんは2014年から代購ビジネスを始めた。日本や韓国へ毎週訪れて人気の化粧品や美容機器、香水、粉ミルク、高級ブランドのバッグ、靴などを免税品店や量販品店で購入。2つのスーツケースいっぱいに商品を詰め込み、収まらない分は国際郵便も使って中国へ持ち帰った。友人、知人が欲しがる商品の代購から始め、中国版LINE「微信(ウィーチャット、WeChat)」のグループチャットを通じて顧客を増やしていった。

 関税や中間流通経費がかかる正規業者の商品より数割安く、購入する側は割安で商品が手に入り、代購事業者は手数料で利益を稼ぐ。「何より、中国で売っていない生活用品やブランド品の人気が高い。逆に中国で買っても料金はあまり変わらない商品もあるが、『日本で買ってきた本物』ということがブランド力になっている」と汪さん。代購ビジネスは日本で「爆買い」が起きる大きな要因となった。汪さんの最盛期の年収は60万元(約1082万円)に達した。

 ただ、こうした代購ビジネスは「密輸」行為にあたり、空港の税関で摘発される代購事業者も少なくない。さらに中国政府は2019年1月、ネット通販事業をする者に営業許可の取得と納税を義務付ける電子商取引法を施行。狙いは代購事業者の取り締まり強化だ。そして2020年に新型コロナウイルス感染症が拡大すると、海外への移動ができなくなった。

 汪さんは、日本にいる中国人留学生に商人の購入を依頼。いわば「代購の代理購入」で、国際郵便で商品を受け取って販売を継続した。ところが、以前より商品の注文が減少するようになった。ここ数年、消費意欲が旺盛な中国市場を開拓しようと、海外の化粧品メーカーや高級ブランド企業が中国各地に直接進出したり、中国のネットショップサイトに公式店を開設したりする動きが相次いでいるためだ。消費者は最新の商品や割引セールなどリアルタイムの情報が手に入り、仮に商品に問題があれば店頭や公式サイトを通じて相談もできる。わざわざ海外で代購を頼む必要性は薄まってきた。

 また、中国の若者の間で国産ブランドを好む志向が急速に高まってきた。これまで中国人自身に「海外製品は一流、中国製は二流」という意識が根強かったが、最近は中国製の品質が向上した上、中国の伝統文化と最新デザインをアレンジした「新国潮」と呼ばれるセンスの良い商品が増え、海外製品のニーズが低くなってきている。

 日本政府は昨年12月、短期滞在の外国人向けの免税制度を見直すことを決定した。入国から半年以内の外国人が免税店で商品を買って海外に持ち出す際は消費税が免税されるが、その対象を滞在期間90日間の旅行者らに限り、外国人留学生らは除外する方針を決めた。2022年度の税制改正大綱に盛り込む。壊滅状態にある日中間の代購ビジネスにとって、いわば「とどめ」のような措置となる。

「コロナ禍が収束したとしても、もう以前のような代購ビジネスはできない」。汪さんは最近、代購ビジネスに見切りをつけ、インターネットのライブ販売を始めている。日本のテレビショッピングと似た商法で、ライブ配信で特定の商品を宣伝して注文を受け付け、売り上げに応じて企業から手数料を得る。ただ、中国では既にライブ販売のインフルエンサーが多数活躍しており、新たに参入して稼ぐのは至難の業だ。汪さんは「先に代購ビジネスからライブ販売に切り替えた知り合いは、みんな継続できずやめてしまった。私もいずれ、別の仕事を探すことになるかもしれない」と嘆いている。(c)東方新報/AFPBB News