【1月15日 東方新報】米国国際教育研究所(IEE)によると、2020年の世界の留学生は約560万人。このうち中国人は約160万人を占め、中国は今や世界一の「留学生大国」となった。日本人の海外留学生の総数11万5100人(2018年度)と比べて約14倍。米国に47万人、オーストラリア13万人、英国12万人、日本12万人、ドイツ4万人、フランス3万人(それぞれ統計は2019~21年と異なる)など、国別留学生の人数でも多くの国でトップとなっている。

 単年度で見ても中国人の留学生は年々増え、2009年の22万人から2019年は70万人となった。このうち帰国者の割合は2010年の約50%から2019年は82.5%に達した。以前は留学先の国に定住する傾向が強かったが、急激な経済成長で中国の生活水準が欧米や日本と大差がなくなり、中国でも高収入が見込めるようになったためだ。

 海外の最先端の知識や技術を持って帰国する留学生は、2000年代は「海亀族」と呼ばれ重宝された。ところが最近は留学生が「だぶつき」始め、就職難に陥っている。

 ある留学生は「海外に留学したのに、月収6000元(約10万8190円)程度の企業しか就職口がない」とインターネットに投稿して話題を呼んだ。この留学生は30社に履歴書を送ったが、面接にたどり着いたのはわずか3社だったという。

 英国に留学した中国人の就職活動を支援する企業の責任者、王志奇(Wang Zhiqi)さんは「英国留学は学費20万元(約361万円)、生活費12万元(約216万円)などで年間総額40万元(約721万円)が必要。留学生が就職を希望する世界的会計事務所の中国法人で、最初の年収はおおよそ12万元」と話す。統計によると、帰国して就職した留学生の4割近くは年収が10万元(約180万円)以下。帰国後も求職活動をしている留学生の13%は「年収30万元(約541万円)以上」を希望しているが、実際にこの給料をもらっているのは5%にすぎない。

 浙江省(Zhejiang)でインターナショナル高校を管理する陳運(Chen Yun)氏は「外資企業や海外との取引が多い民間企業以外、留学生のニーズはそれほど高くない。ただ留学するだけでは、もはや『ボーナスアイテム』ではない」と指摘。北京大学(Peking University)の沈文欽(Chen Wenqin)准教授は「留学は本人の成長や人格形成にプラスの影響を与えるが、純粋に経済的に考えると留学の費用対効果は低下している」と話す。

 留学生の人数が増えすぎたこと以外にも、中国で就職活動のピークを迎える秋シーズンは留学先で授業が行われているというハンディがある。また、中国企業は新人でも即戦力を求めるため、学生は在学中に数か月にわたり企業のインターンシップ(就業体験)を受けるのが当たり前になっている。「企業の面接では『海外で何を学んだか』という質問より、『どの企業で何か月インターンシップを受けたか』と聞かれる」とぼやく留学生も多い。

 留学生の就職難の背景には、「留学の二極化」という問題もある。北京大学、清華大学(Tsinghua University)、復旦大学(Fudan University)という一流大学を卒業してハーバード大学(Harvard University)、シカゴ大学(University of Chicago)、コロンビア大学(Columbia University)などの名門校に進学する「双一流(ダブルファーストクラス)」の留学生は企業から引く手あまただが、最近は「中国で良い大学に入れないから留学して箔(はく)を付ける」という学生も多い。そのため、留学組の中でも「双一流>北米の留学生>英国の留学生>オーストラリアの留学生」と最初から「ランク付け」している企業もある。

「帰国して北京や上海、広州(Guangzhou)の中心部のオフィス街で働き、流ちょうに外国語を使い、高給を得る」。そんなイメージを抱いていたが、帰国してみたら民間企業に就職できず、故郷の公務員や教師の口を何とか探している留学生も多い。経済成長著しい中国では、留学すら必ずしもアドバンテージではなくなっている。(c)東方新報/AFPBB News