【1月15日 AFP】創業から91年、キューバ史に残る重要な出来事の数々を目撃してきた首都ハバナのホテル・ナショナル(Hotel Nacional)。

 新型コロナウイルス流行の影響で観光客が途絶えたホテルは、それを機に玄関の改装、客室の床や窓の刷新に着手した。20か月を経た2021年の11月半ば、ホテルは再びその門を開けた。

 1946年12月には、イタリア生まれのマフィア、チャールズ・「ラッキー」・ルチアーノ(Charlie "Lucky" Luciano)が211号室に滞在した。マフィアのボスの会議がここで開かれたのだ。

 この会議はフランシス・フォード・コッポラ(Francis Ford Coppola)監督の映画『ゴッドファーザーPART II(The Godfather: Part II)』で永遠に記録に残ることになった。

 フロリダ海峡(Straits of Florida)を見渡す丘の上にホテルがオープンしたのは、1930年12月30日。開業資金の一部はマフィアが担ったといわれている。

 開業からちょうど3年後、追放されたヘラルド・マチャド(Gerardo Machado)大統領に忠実な陸軍将校400人がホテルに立てこもった。政府軍は陸と海から砲撃を加えた。多勢に無勢の将校らは、弾薬の数も底をつき、間もなく降伏を余儀なくされた。

 1962年のミサイル危機では、米国と旧ソ連が一触即発で核戦争という状態に陥る中、兵士らがホテルの庭に塹壕(ざんごう)やトンネルを掘った。

 過去の宿泊客には多くの著名人が名を連ねている。五輪水泳の金メダリストで「ターザン(Tarzan)」シリーズの主役スターとなったジョニー・ワイズミュラー(Johnny Weissmuller)は、2階の窓からプールに飛び込み、スタッフらを沸かせた。

 1950年代には伝説的女優のエヴァ・ガードナー(Ava Gardner)が、作家のアーネスト・ヘミングウェー(Ernest Hemingway)らとパーティーをした後、このホテルで朝食にダイキリを飲んだという。

 他にも英国のウィンザー公爵夫妻(Duke and Duchess of Windsor)やウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)元首相、マーロン・ブランド(Marlon Brando)、エロール・フリン(Errol Flyn)、リタ・ヘイワース(Rita Hayworth)ら往年の俳優、歌手のナット・キング・コール(Nat King Cole)もホテルの滞在客だった。(c)AFP/Leticia PINEDA