【1月3日 AFP】フランス当局は2日、首都パリの凱旋(がいせん)門(Arc de Triomphe)に国旗に代えて一時的に掲揚していた欧州連合(EU)旗を降納した。これに先立ち、右派の大統領選候補が、自国のアイデンティティーの「抹消」に当たるなどとして、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領を一斉に非難していた。

 青色の巨大なEU旗は、フランスが今年1月から6か月間、EU議長国を務めることに合わせて、昨年の大みそかに国旗に代えて掲揚された。

 これを受けて、4か月後の大統領選への立候補を表明している右派の各候補が、戦没者の追悼施設でもある凱旋門から国旗を降ろすことは、フランスの遺産と兵役経験者への侮辱に当たるといった批判を展開した。

 共和党候補で、マクロン氏の最大のライバルとも目されるバレリー・ペクレス(Valerie Pecresse)氏は「議長国担当にはウイ、フランスのアイデンティティーの抹消にはノン!」とツイッター(Twitter)に投稿。国旗のために「血を流したわが国の兵士」に報いるため、国旗を元に戻すようマクロン氏に要求した。

 極右のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)氏は、最高行政裁判所への申し立てを表明。また、同じく極右の政治評論家エリック・ゼムール(Eric Zemmour)氏も、「冒涜(ぼうとく)」だと指摘した。

 その後、EU旗が降納されたことを受けてルペン氏は、「大規模な力の結集」によりマクロン氏が引き下がらざるを得なくなったとの見方を示し、「愛国心の大勝利」だと歓迎した。

 これに対し、大統領府関係者は、凱旋門でのEU旗の掲揚はもともと2日間のみの計画で、同旗の降納は「予定通り」だと説明した。

 クレマン・ボーヌ(Clement Beaune)欧州問題担当相は1日、マクロン大統領の対立候補が「極右の不毛な議論を必死にたきつけている」と一蹴し、非難を受けて「撤回」した事実はないと否定した。(c)AFP