【12月25日 東方新報】不動産市場が急激に低迷している中国の各都市で、不動産物件が供給過剰となっている。大幅値下げをして販売する業者が増えているが、値引き前に購入した住民とのトラブルも起きている。

 中国の不動産専門シンクタンク「易居房地産研究院」が12月10日に発表したリポートによると、国内主要100都市の新築住宅の在庫は11月末時点で5億2110万平方メートルに達し、2016年8月以来の最悪の水準となっている。在庫数は36か月連続で前年同月比を上回り、在庫の平均消化サイクルは12.5か月と長期化している。中国で3線都市、4線都市と呼ばれる地方の中小都市で在庫のだぶつきがとりわけ深刻で、在庫の消化サイクルは2~3年に及ぶ。

 中国では2020年にコロナ禍が拡大し、製造業や観光業などが低迷すると、不動産へ投資が集中。不動産価格が高騰して市民から不満が高まり、政府が今年夏に不動産市場の過熱を抑える方針を表明した。その後、不動産大手の恒大集団(Evergrande Group)の債務危機が発生するなど、不動産市場が一気に冷え込んだ。不動産業者は当座の資金を得るためにやむなく在庫の安売りを開始。当初の販売価格からの25%値引きも珍しくなく、半値近くにする業者もいる。

「不動産市場が寒くなるほど、マイホームを買いたい庶民の心は温かくなる」と歓迎する声もあるが、湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)では10月に「値下げ抗議デモ」が発生した。1平方メートル1万5000~1万6000元(約27万~29万円)でマンションを販売していた業者が1万2000~1万3000元(約22万~23万円)に値下げすると発表したことに対し、つい最近マンションを購入した住民らが「資産価値が一夜で30万~50万元(約539万~898万円)下がった」と反発。業者に値下げした差額の返金を求めて拒否されると、市政府庁舎前で自分たちの主張を訴える抗議デモを敢行した。警察は公共の秩序を乱したとしてリーダー格の男性を10日間、25~32歳の男女7人を5日間の行政拘留処分とした。武漢市は、騒動のきっかけをつくったとして業者にも罰則を科した。

 こうした事態を受け、各地方都市では社会不安を招く事態を防ぐため、業者に「値下げ制限令」を打ち出し、同時にマンション購入者に補助金支給や免税措置をすることで部分的な実質値下げを図り、不動産の在庫解消に取り組んでいる。中国で不動産と言えば7月までは「価格高騰」ばかりがニュースだったが、半年足らずで値下げが深刻な問題となり、ジェットコースターのような激しい展開を迎えている。(c)東方新報/AFPBB News