【12月24日 東方新報】「中国版ニコニコ動画」といわれる中国の動画共有サイト「ビリビリ動画(%%bilibili%%)」。日本のサブカルの影響を受けて始まったビリビリは成長を続け、オタク・マニア向けのサイトから総合サービスサイトに変貌を遂げている。

 2009年6月、当時大学生だった徐逸(Xu Yi)氏が初音ミク(Hatsune Miku)のファンサイト「MikuFans」を開設し、2010年1月に「bilibili」に改名。ライトノベルの人気シリーズ「とある魔術の禁書目録(A Certain Magical Index)」の主人公・御坂美琴の愛称「ビリビリ」を由来とする。ビリビリはアニメ、マンガ、ゲームといった2次元コンテンツの動画共有サイトとして人気となり、既存の動画を再編集した2次創作物が多く投稿された。投稿するクリエーターを「UP主」と呼ぶのも日本由来。画面上に流れるようにコメントが表示される「弾幕」はニコニコ動画をほうふつとさせ、ビリビリの公式キャラクター「22娘」と「33娘」は日本アニメの萌(も)えキャラのようだ。

 当初は日本製アニメを違法にアップロードするサイトのイメージもあったが、2016年からテレビ東京と提携し、正規版アニメを放映。ビリビリが中心となって開発したゲームアプリ「碧藍航線(アズールレーン、Azur Lane)」は日本を含め海外でも人気になった。そしてアニメ、ゲーム、音楽、エンターテインメントから科学、生活、車、知識などジャンルを広げ、2018年3月には米ナスダック(Nasdaq)に上場を果たした。

 ビリビリの今年第3四半期(7~9月)の売上高は前年同期比61ポイント増の52億1000万元(約927億1143万円)。月間アクティブユーザーは平均2億6700万人に上り、月間課金ユーザーも平均2400万人に達した。月間投稿数は1000万件を超える。UP主の中心は24~30歳の「Z世代」で、男性が61%、女性が39%。ビリビリの陳睿(Chen Rui)董事長は「わが社は今年で12年目を迎えるが、今も若者のプラットフォームとなっている」と強みを語る。投稿者の収益化を支援するクリエーター奨励プログラムに約50万人が参加し、投稿者がプラットフォームをまたいで著作権侵害を検出できる著作権保護プログラムを進めるなど、UP主への手厚いサービスが躍進を支えている。

 ビリビリはもはやサブカルだけのサイトではない。近年は多くのドキュメンタリー作品の発表の場となっている。2019年に書店や本にまつわる人びとを取り上げた『但是還有書籍(And Yet The Books)』は再生回数が約1000万回に達し、同名のリアル書店が上海市にオープンする人気ぶりとなった。英BBCや米ディスカバリーチャンネル(Discovery Channel)とも提携し、良質なドキュメンタリーを製作している。

 2020年9月には「ビリビリ動画衛星」の打ち上げに成功。美しい地球の映像など、衛星が取得した動画や画像データを科学の普及に使う。今月上旬には、イングランドで行われるサッカーのカップ戦「FAカップ」のデジタル独占放映権を3年間獲得したと発表。スポーツコンテンツに乏しく「スポーツの砂漠」と呼ばれていたビリビリが、また新たな一歩を踏み出した。

 巨大プラットフォーマーとして拡大を続けるビリビリ。3年後にはユーザーを4億人とする目標を掲げている。(c)東方新報/AFPBB News