■「フレネミー」中国との「共通の敵」は米国

 中国と長期的な緊張状態にある米国に対して、金氏は、祖父であり、北朝鮮を建国した金日成(キム・イルソン、Kim Il Sung)国家主席を手本にできるだろう。

 金日成氏は、冷戦(Cold War)時代の旧ソ連(現ロシア)と中国の緊張関係を利用し、この二大共産主義国が争うよう仕向けた。

 北朝鮮と中国は朝鮮戦争(Korean War)で共に、韓国および米国主導の国連軍を相手に戦い、休戦に持ち込んだ。それ以来、北朝鮮と中国のつながりは友であり、敵でもある「フレネミー(フレンドとエネミーの造語)の愛憎関係」だとタフツ大の李教授は言う。

「どちらも相手を好んではいない。それでも、戦略、イデオロギー、歴史の面でも、そして米国を共通の敵として抑え込む上でも、互いを緊密な同盟国だと認識している」

■「かなりの成果」

 隣の中国を見ていれば、右肩上がりの経済成長がずっと続くと一党独裁が支持されることを金氏も学ぶはずだが、北朝鮮は兵器やミサイルは獲得する一方で、この数十年、国家主導の経済運営に失敗してきた。これは国連制裁が発動される以前からのことで、中国も不満を抱いている。結果、北朝鮮国民は慢性的な食糧不足に苦しんでいる。

 医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な北朝鮮は、中国で新型コロナウイルスが発生すると、昨年国境を封鎖した。

 北朝鮮は今なお感染者はゼロだと主張しているが、金氏は食糧事情が「緊迫している」ことを認め、「史上最悪の事態」に備えるよう国民に呼び掛けている。

「経済的には、北朝鮮は世界ランキングで最底辺にいる」と韓国・梨花女子大学(Ewha Womans University)の朴元坤(パク・ウォンゴン、Park Won-gon)教授(北朝鮮学)は指摘する。

「しかし核兵器のおかげで、世界の二つの大国、米国と中国の間で影響力を行使することができる」と朴氏は付け加えた。「これは北朝鮮にとって、かなりの成果ではないか」 (c)AFP/Sunghee Hwang