【12月15日 AFP】4月に6人を射殺し、自らも命を絶った米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の元選手フィリップ・アダムス(Phillip Adams)容疑者が、脳の変性疾患である慢性外傷性脳症(CTE)を患っていたことが14日、明らかになった。

 ボストン大学(Boston University)の神経病理学者であるアン・マッキー(Ann McKee)氏らが、アダムス容疑者の脳を検視したところ、「異常に深刻な」損傷の兆候が見つかった。

 CTEは、脳振とうなどの外的衝撃が頭部に繰り返し加わることで発症し、生前に検査で発見することはできない。攻撃性や衝動的な行動の増加、気分の落ち込み、不安障害、錯乱状態、自殺願望などのさまざまな行動障害、また記憶喪失といった進行性の認知機能障害との関連が指摘されている。

 CTEの研究が進んだことで、アメリカンフットボールやラグビーでは近年、脳振とうが大きな問題になっており、NFLは2016年、推定10億ドル(当時約1090億円)の補償金を支払うことで元選手らと和解している。

 32歳だったアダムス容疑者は、学生時代からアメリカンフットボールをプレーし、NFLでは2010年から2015年にかけて、サンフランシスコ・フォーティナイナーズ(San Francisco 49ers)やオークランド・レイダース(Oakland Raiders、現ラスベガス・レイダース<Las Vegas Raiders>)、アトランタ・ファルコンズ(Atlanta Falcons)などで6シーズンプレーした。

 アダムス容疑者の家族から話を聞いたサウスカロライナ州ヨーク(York)郡の検視官によれば、容疑者は「何度か脳振とう」を起こして「耐えがたい痛み」を訴えていた他、記憶障害や不眠にも苦しんでいたという。

 マッキー氏も「フットボールを20年続けてきたアダムス容疑者は、CTEの高いリスクにさらされていた」とコメント。しかし一方で、CTEだけが殺人に及んだ原因とは言い切れないとも話した。(c)AFP