【12月25日 AFP】激しい暴風雨に繰り返し見舞われ、気候変動に対する脆弱(ぜいじゃく)性が浮き彫りになった米ニューヨーク市では、海面上昇から街を守るため、総工費14億5000万ドル(約1650億円)の防潮堤と水門の建設プロジェクトが進められている。

 ロウアーマンハッタン(Lower Manhattan)の沿岸部4キロを対象とした防災計画「イーストコースト・レジリエンシー・プロジェクト(East Coast Resiliency Project)」は、2012年の大型ハリケーン「サンディ(Sandy)」が発端となって始まった。今年、ハリケーン「アイダ(Ida)」による被害が生じ、その緊急性がさらに増した。

 ニューヨーク市デザイン建設局(DDC)のトム・フォーリー(Tom Foley)局長代理によると、サンディが米東部で猛威を振るった際、同市では約2.4メートルの水位上昇を確認。11万人の生活に影響が及び、市民44人が命を落とした。被害総額は190億ドル(約2兆1000億円)に上った。

 計画についてフォーリー氏は、高さ約5メートルの防潮堤に加え、防潮水門も設置されると話した。米国で最も人口密度の高いマンハッタン地区への水の浸入を防ぐ。

 さらに新たな地下排水システムを通じて下水道の処理能力を高めるとともに、配電施設の設置で停電への対策も講じる。サンディの際には停電が数日間続いた。

 だが、このプロジェクトだけでは、今後想定される海面上昇に対応することは到底できない。予想される上昇値は、2050年までに60センチ以上、今世紀末までに180センチとなっているが、ニューヨーク市の沿岸部は全長840キロにも及ぶのだ。

 ニューヨーク市長室災害復興回復局のジェイニー・バビシ(Jainey Bavishi)氏によると、同市が模索しているのは「多層的戦略」だという。

「沿岸部では防御インフラを構築しており、そこでは水の浸入を防ぐことが可能でしょう。ただ、あらゆる場所で水の浸入を防ぐのは難しいことも認識しています」とバビシ氏。

 現在設置作業が進められている壁は調節可能型で、「海面上昇と高潮が、想定を上回る場合には、壁をさらに高くして対応することができる」と説明した。

 また、マンハッタン地区では建物や重要インフラの補強作業が進められている他、高リスクと判断されたエリアでは建築そのものが制限されている。さらに異常気象時の被害を最小限に抑えることを目的に、地域の住民や中小企業と協力体制を敷いている。

 だが、このプロジェクトに反対する声も上がっており、複数の団体が異議を申し立てている。こうした反対によって遅延が生じなければ、プロジェクトは2026年の完成を予定している。(c)AFP/Ana FERNANDEZ